「よしんば」という言葉があります。
これは普段あまり日常では使われることは少ない「大和言葉」の一種なのですが、ごくたまに使う人もいてその意味がよく分からないという人が多いのではないでしょうか。
日常会話では耳にする機会はそれほど多くありませんが、小説や新聞記事など、文章を格式高いものにする際に使用されるような印象があります。
こちらでは、「よしんば」の意味について改めてお伝えしていきたいと思います。
よしんばの意味とは
「よしんば」を漢字で書くと「縦んば」という風になります。「たてんば」ではないんですね。
そもそも縦(よし)という言葉自体には主に二つの意味が込められており
①満足ではないがやむを得ない様、仕方がない、どうでも
②仮に、例え(好ましくないことであったとしても)
という風になっております。
①は「可し(よし)」と許容する様から来ております。縦というのは「継母」という言葉があるように「まま」という読み方をしますね。「ええい、ままよ!」という、ある種自暴自棄になる際に放つ言葉はこの意味で使われています。
そして本題の「よしんば」のよしは②の例え、仮にという意味から来ているものです。それは「仮に~であったとしても」とか「例えそうであったとしても」という逆説の仮定を後に続ける形になります。英語で言うと「even if 」とか「however」といった感じでしょうか。
このよしんばを使っている人は、後に逆接の文章を続けるのではなく単純に「例えば」というような意味で言っている人も多いですが、これは本来の使い方からすれば誤用という風になります。
あくまでも逆説の意味の文を続けるのが正しい使い方なので、例文としては
・よしんば彼がそう言ったとしても私の気持ちは変わらないだろう
・よしんば命を失おうともかまわない
といった具合になるでしょう。
前述のように「よし」だけでもすでに「仮に」とか「例え」という意味が込められておりますので「んば」というのは何なのか?という疑問も沸いてきますがこれは単に強調語であり、「そうならば」「左様ならば」から「んば」という風になったのです。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という言葉に「んば」というのが使われていますね。これは正に読んで字のごとし、虎穴に入らなければ虎の子を得られない、という仮定の話をしています。
このように言葉の意味を一つ一つ紐解いていくと、その理解が深まるだけではなくその成り立ちを覚えることで意味を記憶しやすいというメリットもありますね。ちゃんとその成り立ちを理解すれば「よしんば」の意味も忘れることがないでしょう。