様々な意味を持つようになった「ヤバい(やばい)」という言葉。(便宜上、検索に引っかかるようにヤバいとやばいの両方で書いてます。)
かつてはどちらかというと悪い意味で使われることのほうが多かった言葉ですが、言葉の意味というものは時代と共に変遷していくもので、今では正反対の良い意味でも使われていたりしますね。
一方で、何かあるごとにとにかく「ヤバい(やばい)」を連呼するという人たちもいます。そういう人たちは主に若年層に多いので「ヤバい(やばい)」という言葉は若者言葉の代表格のように思えます。
でも「ヤバい(やばい)」の「ヤバ」って一体どこから来ているのでしょうか?ここでは、そんな「ヤバい(やばい)」の語源や由来・本来はどのような意味で使われてきたのか?その歴史などをお伝えしたいと思います。
ヤバい(やばい)の語源・由来と意味の変遷
私たちが「ヤバい(やばい)」という言葉を聞いたとき、まずイメージするのは「公共の場で使うのはあまりふさわしくない」というものですよね。気心の知れた仲間内やくだけた雰囲気の場では使っても許されますが、よく知らない人や目上の人がいる場面で使うことは憚られます。
それもそのはずで、「ヤバい(やばい)」の語源を知っていくとわかるのですが元々は香具師(やし)や盗人などが使っていた隠語に由来しています。
香具師というのはいわゆるテキ屋で、祭りの縁日などで露天商を営む人たちのことです。
テキ屋は「七割商人、三割ヤクザ」と言われているように、素行のよろしくない人たちがいる業種でもあります。そして、盗人の素行の悪さは言わずもがなですね。
いわゆるそういったアウトローな人々が「具合の悪い様」「不都合な様」を指す形容動詞「やば」を形容詞化して使ったのが「ヤバい(やばい)」という言葉の語源になったとされています。
今では堅気の人たちも日常用語として使用するくらいまでに至っていますが、以前は若者が、それも何というか「ワル」に憧れてそうな若者が好んで使ってるイメージがありましたよね。ルーツがこういったところにあるのでそれが原因だったのかもしれません。
テキ屋が盗人が使っていた言葉が語源になったという説にはもう一つあり、泥棒が地面に這いつくばりながら忍び込むことを夜這い(よはい)といい、そこから「やはい」、「ヤバい(やばい)」に変化したという説もあります。
さらには、犯罪者を収容する施設する施設の牢屋のことを「厄場(やくば)」と呼んでいたことから看守のことを「やば」と呼ぶことに転じ、牢屋に入れられてしまうほど危ない橋を渡ることを形容して「ヤバい(やばい)」と言った説なども存在します。
どの説が正しいとしても、共通しているのは盗人だのヤクザだの牢屋だの、一般人とは無縁のアウトローな世界で生まれた言葉ということなんですよね。公共の場で使用する言葉として市民権を得ていないのは当然と言えるかもしれません。
さて、このヤバい(やばい)という言葉が現代に現れたのは1970年代くらいからです。誰が言い出したのか分かりませんが、この時は「不都合・危険」という、上記にあるような本来の意味として登場したのですが、これが80年代になると「センスが悪い、格好が悪い」という意味で「ヤバい(やばい)」が使われるようになっていきます。
若者言葉という印象が強く、今でも若者たちの間で好んで使われていますが、こうしてみると若者言葉どころか、中年くらいでも普通に使っている言葉と言えそうですね。
「ヤバいよヤバいよ」でおなじみ出川哲郎さんは1964年生まれで、80年代を過ごした若者の代表ですが、すでに齢50を重ねるオジサンですのでそれも納得というものです。
これが90年代に入ると、80年代のものとはまるで逆の「常識的な尺度を超えるくらいにかっこいい、凄い」というような意味で使われ始めます。
どうしてこのような意味で使われるようになったのか?そのヒントはおそらく、マイケル・ジャクソンにあるのではないでしょうか。
マイケル・ジャクソンは様々なヒット曲を出しておりますがその中に「BAD」という曲がありますね。1987年に発表されたものです。「bad」というのは英語で「悪い」という意味だという風に習いますが、マイケル・ジャクソンの「BAD」はその逆で「イケてる」「かっこいい」という意味で使われています。
これは正に「ヤバい(やばい)」と同じですよね。あえて逆の意味の言葉を使って表現をするということのきっかけになったのではないでしょうか?
そして現在では、「常識的な尺度を超えるくらいにかっこいい、凄い」から一部分を切り取って「常識的な尺度を超えるくらい凄く」という意味で、「ヤバい(やばい)大きさ」とか「ヤバい(やばい)美味さ」とかいう具合に使われていますね。今後も時代とともに使い方や意味が変遷していく可能性があります。
ヤバい(やばい)以外にも昔から存在した言葉「マジ」「きもい」「ビビる」「へこむ」
この他にも、実は江戸時代から存在している言葉というのは結構存在します。
「マジ」「きもい」「ビビる」「へこむ」これらはすべて、江戸時代以前から存在している言葉で、中には平安時代から存在しているという古い言葉もあります。
しかし、「古い言葉」イコール正しい日本語というわけではありません。
当然、昔の日本でもフォーマルな表現とくだけた表現をその場にふさわしいように使い分けていたりしますし、何より「昔使われていたから」という理由だけで相手を納得させることはできないでしょう。
「ヤバい(やばい)は江戸時代からあるんで・・・」などと言ったところで「何言ってるんだこいつ」と思われて終わりです。そもそも、言葉遣いをいちいち指摘してくるということも珍しく、相手との関係にもよりますがただ不快に思うだけで口にせず、というのが関の山でしょう。