うだつのあがらない、或いはうだつがあがらないという言葉があります。
イメージとしては、パッとしない、冴えない、主に人を評して「うだつのあがらない人」のような表現をします。
気になるのは「うだつ」という言葉です。どんな漢字で書き、どのような意味が込められてこの言葉が生まれたのでしょうか?ということで「うだつがあがらない」という表現の由来についてお伝えしたいと思います。
うだつの由来とは
うだつの語源について調べていくと、意外なものが由来になっていることが分かりました。
「うだつ」とは漢字で書くと「卯建・宇立」といった具合で、梁(うつばり)の上に立てる小さい柱のことを言ったのですが、後に自家と隣家との間の屋根を少し持ち上げた、隣家への延焼を防ぐ防火壁の部分を「うだつ」と呼ぶようになりました。
つまり建築用語だったんですね。
防火以外にも、防風や目隠し、あるいは隣家との境目を決めるためのものという役割も持っていました。
中世(鎌倉~室町時代あたり)からの日本家屋の作りの様式から発生している、かなり歴史の古いものです。
岐阜県の美濃市には、「うだつの上がる街並み」という観光スポットがあり、実際に「うだつ」がついた家というものが見られます。
昔は家と家が隣接して建てられていることが多く、火事の延焼が問題になっていたんですね。まあ、鉄筋コンクリートの建物が作られたのは明治に入ってからとされていますし、それまでは家というのはよく燃える木造住宅だったと思うとそれもうなづけます。
「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉があるくらい、江戸時代は大火事が多かったとされていますしね。
今では家と家が隣り合っているということはあまりないですね。
それにしても、素人目からするとこれだけで火事の延焼を防ぐ効果があるの?と思ってしまいます。上のほうの部分はともかく、もう少し下の隣接している部分から燃え移ってしまうんじゃないかと思いますが、壁面は土で厚く塗ることで防いでいたんだそうです。
これが江戸時代中期頃になると、本来の火事の延焼を防ぐという目的から、装飾としての意味合いを強く持ち始めます。
というのも、うだつを取り付けるためにはそれなりの費用が必要であり、うだつの上がっている家というのは比較的裕福な家に限られていました。
そのため、裕福な人はその財力を誇示するために競うように立派なうだつを上げるようになったのです。
外観として見物することが出来るため絶好のアピールポイントだったのでしょうね。ただ、イメージとしては「うだつ」だけが立派で、家本体が貧相では逆に嘲笑されてしまいそうです。身の丈に合わぬ高級外車を買ってその中を家にするという人がいましたが、ああいう感じでしょうか。
かといって、家が立派すぎるとそっちに目が行ってしまいせっかく取り付けた「うだつ」を見てもらえないのでは?そんな心配もわいてきます。
戦後になると建築様式も改められて、古い建築物はなくなってしまい、うだつも姿を消してしまいました。
なぜ廃れていったのかはいまいち理由が不明です。単に隣り合って家を建てるということがなくなって、うだつをつける必然性もなくなったということでしょうか?
前述の阜県美濃市のほかには、徳島県美馬市でも「うだつの上がる街並み」を見ることができるようですね。
ただ木造住宅で隣家との防音対策もままならない、しかも公営住宅のように家がずらーっと並んでいるところというのは、生活の実情面からすればあまり住みたくはない家ですね。
「うだつがあがらない」の意味とは
普通、言葉というものは時間が経つにつれて微妙にニュアンスや意味を変えてくるものですが、この「うだつがあがらない」という言葉の意味は本来の使い方からそれほどかけ離れているものではありません。
この言葉の意味は、「いつまでも出世しない、生活が向上しない、身分がパッとしない、幸せになれない」という感じになります。「うだつのあがらない男と一緒にいたくない」という表現をしますね。
これは、「うだつ」が生活の豊かさの象徴だったという由来に鑑みてもその由来通り正しく使われているものですよね。
ただ、これは個人的な意見になりますが「○○もできない男」とか「○○も知らない男」などのような嘲笑の仕方をするのは好きではないですね。
人というのは常に自分と他人を比べて、自分が劣っているのか優っているのか、あるいはどちらがグループに属していてどちらが孤立しているかというのを比べる傾向がありますよね。
そういう人間のいやらしい部分が全面に出た言葉がこの「うだつのあがらない」という表現だと思います。
現代風に言えば「30過ぎて所帯も持てない男」だとか「マイホームも建てられない男」「車を持っていない男」といった感じでしょうか。
おそらく、うだつに関しても同じだと思うのですが「自分の力を他人に誇示すること」を無粋に思って敢えてしない、という人もいたことと思います。そういう人らを嘲って笑ってできた言葉だと思うと、あまりいい気持ちはしないですね。
まあ、こういう立場で評する人というのは主に女性側でしょうか?現代の女性は「うだつのあがらない」なんて言葉は使うことはほぼないでしょうから、良いのかもしれませんが。