たらい回しの語源・意味・由来とは?医療の報道における誤用とは

「たらい回し」という言葉がありますね。

たらい回し

主に役所の窓口や病院などで使われる、あまりイメージの良くない言葉です。

ただ、元役所の人間からするとたらい回しにしてしまう理由というのもちゃんとあるのですよ。皆さんのように良識ある人間だけが窓口にいらっしゃるのであれば全く問題ないのですが、中には頭が狂ったような輩もいます。通常の民間であれば門前払いにするような輩でも、追い払うわけにはいかず「誠実な対応」を求められます。

特に、生活保護受給者は非課税なのになぜか声が大きい人が多いです。民間であれば客でも何でもないので普通に追っ払いますよね。

「ちょっとくらい柔軟に教えてくれてもいいじゃない」と思うかもしれませんが、専門ではない分野のことを適当に言って、もしそれが間違っていたら「さっきは窓口で○○と言われたぞ!」と激高するに違いないです。間違ったことを教えられないという意味でも、別の窓口を案内するという手しかありません。。

また、これは民間企業でもそうなのですが別の窓口で専門外のことをすると、それに味を占めて「前はここでやってくれたぞ!」と言い出す輩もいるのです。所詮専門外の分野のことなので、何かの拍子で間違うこともあります。となると上記のような事態を招くリスクがあります。

特に役所はまじめに仕事をしていても風当たりが強く、ちょっとしたことで揚げ足を取られてしまいます。自衛の術もありますが、窓口に来た人を混乱させないためでもありますので、役所でたらい回しにされてしまう理由というのもわかっていただけますでしょうか。

さて、そんなたらい回しという言葉の意味・由来・語源とはどんなところにあるのでしょうか?

たらい回しの由来

たらい回しという言葉は江戸時代に発祥し、明治時代~大正にかけて隆盛した曲芸が由来になっています。

たらいまわし

このように、仰向けになった曲芸師たちが足でたらいをくるくると回し、ある程度回したところで隣の曲芸師に受け渡すという具合です。

たらい回しというのはあくまで「足の上で回す」ことを指します。しかし、その足の上で回しながら次へと受け渡しても、結局土台の足は変わらないことから「回っているだけで中身がない」「馴れ合いで順番に回す」として「たらい回し」が使われるようになったのです。

しかしこれでは、曲芸師たちもたまったものではありませんね。そんなことを言い出すなら、そもそもこういった演芸とかは「見る人を楽しませる」ということを目的にしているので、深く考えだしたら中身などありません。最近で言えばオリンピックがありましたが、体操の鉄棒だって「回っているだけで中身がない」ことになります。

今では、シルク・ドゥ・ソレイユに代表されるようにサーカスとか曲芸というのはものすごく進化しており、たらい回しというのは廃れてしまったのか全く見ませんね。もしかしたら、このように「中身がないこと」と揶揄されて狂言師たちのモチベーションが保てず、後世に残そうという意欲もなくなってしまったんじゃないか、とそんな予想をしてしまいます。

こうやって言葉が独り歩きすると、それ自体が力を持ってしまうという怖さがありますからね~。

医療報道におけるたらい回しの意味

たらい回しというと、役所の窓口以外だと医療報道におけるものが印象強いですね。

救急車

しかし、これぞ正に言葉の一人歩きによる風評被害と言えるでしょう。医療機関がたらい回しというと、あたかも病院側が自己都合で患者を受け入れるのを拒否して、他の病院を薦めているかのようなイメージを持ってしまいます。

確かに、重症の妊婦を搬送する救急車が、病院での受け入れを拒まれたため、数時間後に死亡するという事態も発生しているようです。この表面だけを切り取ればあたかも病院が悪であるかのように思えますが、それは「別の患者を治療しているため受け入れても治療が行えない」というようなやむを得ない事情があります。

慢性的な医師不足、それほど重症でもないのにすぐに病院の診断を受けに来る患者、タクシー代わりに救急車を呼ぶ患者など、医療における様々な問題が要因となって起きていることなのですが、最終的な結果だけを見て「病院がたらい回しにした!病院が悪だ!」というのはあまりにも短絡的すぎます。

しかし、「たらい回し」という言葉が一人歩きしているので、これを当てはめられてしまうわけですね。

広辞苑によれば、たらい回しの意味は「一つの物事を責任をもって処理せずに次々と送りまわすこと」とされています。このことから鑑みても、医療機関におけるものは「たらい回し」には当たらず、誤用と言えるでしょう。「責任をもって処理せずに」ではなく、やむを得ずそうしているからです。

そもそも、医療関係の仕事をしている人というのは「人の命を預かる」という重責を担うことを承知で志しているはずです。医者が高給取りとは言いますが(それも全員がそうだとは限らないですが)、仮に高給がもらえるとしても私ならそんな責任の重い仕事はしたくないなあと思ってしまいます。

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