今、芸能人(特に女優さんに多いようです)の顔立ちのことを「昭和顔」という風に区分けをするのが一つの主になっているようですね。
これは、朝ドラのヒロインなどに代表されるようにいわゆる「素朴な」顔立ちの女優さんがブレイクしていることにちなんで生まれた言葉のようです。
いわゆる「美醜」の条件というものは時代によって変わっていくもので、奈良時代であればふくよかな女性が美人とされ、平安時代であれば切れ長の目と瓢箪型の顔をした女性が美人とされ、江戸時代は自然な顔立ちの女性が美人とされてきました。
人間の美醜の感覚って、環境によって変わりますよね。10年前の自分と現在の自分を比べて、異性の好みというものも変わってきているはずです。そしてそれは生まれた国が違ってもそうですね。
なぜ人間には、動物にはない美醜の感覚が備わっているのか、ということを突き詰めると哲学的な話になってきてしまうのですが、それはともかく「昭和顔」というものも、人間の美醜の感覚が時代によって変わることから生まれた言葉なのでしょう。
そんな「昭和顔」とは一体どんな特徴を持つ顔の人のことを言うのでしょうか?もうすこし詳しく考えていきたいと思います。
昭和顔の特徴と平成顔
昭和から平成へと年号が変わって二十余年。時代が変われば、女性の美の流行も変わります。「昭和顔」が台頭したのは「平成顔」が広まったという土台があったからこそでしょう。
「平成顔」と言われる女優には、佐々木希さん、菜々緒さん、北川景子さんなどがいますが、華やかでキラキラした顔立ちの人たちが多いような気がしますね。
対して「昭和顔」とされる女優さんには有村架純さん、松岡美優さん、黒木華さん、多部未華子さんなど素朴でナチュラルな顔立ちの人たちがいます。
「昭和顔の特徴」とされているものは
・よく言えば素朴、悪く言えば垢(あか)抜けない田舎風な顔立ち
・太眉、目の下の涙袋が自然とぷっくりしている
・派手顔ではなくアッサリ顔をしている(昔で言うところの醤油顔?)
・時代劇や昭和が舞台の作品、特にNHK連続テレビ小説に出ていても違和感がない
・大きすぎず、涼しげな目をしている
・鼻筋が通っている
・肌がきめ細かい
・小顔ではない
・誰でも親しみやすい
・見ていて癒される
などです。中には顔の特徴として挙げていいものかという疑問が湧いてくるものがいくつかあります。
面白いのは、上記に挙げた「平成顔」とされる3人のうち2人が昭和生まれで、逆に「昭和顔」として挙げた4人の全員が平成生まれという逆転現象が起こっていることです。
しかし中には、昭和顔から平成顔へと変貌を遂げた女優さんもいます。
石原さとみさんは、デビュー当初は美人ではあるものの太い眉が印象的で、どちらかというと「素朴」、悪く言うと「芋っぽい」顔だちをしていたように思えます。
しかし現在の石原さとみさんは洗練されて「芋っぽさ」はなくなり、誰が見てもキラキラした美人女優さんになっていますね。
この石原さとみさんの例からすると、結局は「美人ならなんでも似合う」という身もふたもない結論になる気がします。
石原さとみさんは元の顔立ちが美人だったので、メイクをきちんとすればいくらでも洗練された「平成顔」へと近づけますし、また逆も然りでしょう。美人故に振り幅が大きいというだけのことです。
例えば上記の「平成顔」の代表として挙げた北川景子さんのすっぴんを見ると
やはり元が美人なので、これをベースに昭和顔っぽいメイクをしてもそれらしくなると思うんです。
つまり、「昭和顔」というのは「地味」とか「素朴」といった言葉に華を持たせるためのフレーズということでしかないのです。「昭和顔の特徴」として挙げられているのは、「地味だけど活躍している女優」の顔立ちからトレースして羅列しているにすぎません。
あるいは、ドラマの役柄によるイメージや印象も大きいところでしょう。有村架純さんが「昭和顔」とされているのは、朝ドラの「あまちゃん」にていわゆる「聖子ちゃんカット」をしたことが大きいです。あまちゃんは有村架純さんの出世作とも言えるもので、ここで知名度を上げた有村架純さんの印象を強く形成していますよね。
一方で「ビリギャル」でギャルを演じた時も特に違和感はなかったでしょう。
そもそも昭和の象徴たる「聖子ちゃんカット」のモデルである松田聖子さん自身が、上記に挙げた昭和顔とはかけ離れているような気がするのですが・・・
言葉を言い換えてオシャレさを増すというのはメディアの常套手段です。和菓子を「和スイーツ」、肥満を「マシュマロ系」といった具合に柔らかいフレーズに置き換えていますよね。昭和顔もその一つなのではないでしょうか。