「しゃらくさい(もしくは、しゃらくせい)」という言葉があります。
「しゃらくさい奴だな」といった具合に使いますが、ニュアンスで何となく悪口っぽいことはわかるものの具体的にどういう意味があるのかということは知らない人がほとんどではないでしょうか。
私はこの「しゃらくさい」という言葉は、昔格闘ゲームのキングオブファイターズというゲームに山崎竜二というキャラクターが必殺技を繰り出す際に「しゃらくせえ!このド素人があああ!」と叫んでいたイメージがあり、あまり良い印象がありません。
こちらでは、「しゃらくさい」もしくは「しゃらくせえ」の意味や語源について探ってみたいと思います。
しゃらくさい(しゃらくせい)の語源とは
さて、この「しゃらくさい」の意味を知るためには、何が語源となったのかということを探っていくのが一番よさそうです。
この言葉の由来というのはいくつかあります。
①「お洒落」が転じた説
まず一つはお洒落(おしゃれ)が転じて「しゃらくさい」になったという説。
時は江戸時代にさかのぼります。この時代は洒落(しゃれ)という言葉が流行した時代でもあるのですが、あくまでも特権階級の人たちのものでした。これを庶民が形だけ真似する様を身分不相応で似合わないという意味で「しゃらなやつ」という風に表現していたのです。
「しゃれ」を「しゃら」としたのは、まがい物であるということを強調する表現なのかもしれませんね。ファイナルファンタジーで聖剣エクスカリバーを模した「エクスカリパー」なんて偽物がありましたが、ああいった感じでしょうか。
「くさい」というのは現代においても「面倒くさい」「胡散くさい」といったように「そのように見える」という意味でマイナスのイメージの言葉を作る際に使いますね。
②お香の「伽羅」が転じた説
二つ目は「伽羅」というお香が語源になっているという説。
これまた江戸時代の話になりますが、遊郭に遊びに行く男性でモテない男性ほど遊女に気に入ってもらおうとして「伽羅」というお香の臭いをプンプンさせていき、それを馬鹿にして「伽羅臭い」と言っていたのがいつしか「しゃらくさい」に変わっていったというものです。
これの場合はしゃらくさいの「くさい」が文字通り、「臭い」ということになりますね。
あるいは、遊女が部屋の中で「伽羅」のお香を焚いていたのに野暮な客が外から変な匂いを持ち込んでしまい台無しになってしまうのでそれを冷かして「伽羅臭い」と言ったという説もあります。
③遊女のことを「しゃら」と呼んだ説
三つめは越前の三国界隈で遊女のことを「しゃら」と呼んだことからくるとする説。
素人女性が遊女のようにめかしこむ様を馬鹿にして言っていたとするものです。
④「シャラシャラ」という擬態語から転じた説
四つ目は「シャラシャラと」「シャラリシャラリと」という擬態語から転じたとする説。
女性の帯の先が垂れ下がって,歩くとシャラシャラと揺れる様がどこか生意気に見えたことから、その「シャラ」に「くさい」を付け足したのです。
この場合の「くさい」は①で説明したようにマイナスのイメージの言葉を作るために使われておりますね。
⑤社楽斎という男の名前からきた説
昔、社楽斎 (しゃらくさい) という俳号をもつ男がいて、その男がどうとち狂ったのか「仙薬を飲んで空を飛ぶ」と言い出したそうです。しかし出来るはずもなく、高いところから落ちて腰を痛めてしまいました。このことから「不可能なことを無理してやる」ことを「しゃらくさい」と言うようになったのだとか。ちょっとこの話は出来すぎていて嘘くさいですね。
さらには、江戸時代の浮世絵師・写楽(しゃらく)からきているという説もあり、逆にこの「しゃらくさい」を語源にしたのが写楽なのではないか、という話もあります。
いずれにしても、分不相応なお洒落をしている様を皮肉めいた表現をしているのがこの「しゃらくさい」ということになりますね。当初は、身分不相応なお洒落をしていて俗っぽいという意味だったのですが、いつしか分に似合わず生意気な様子を指す意味の言葉へと少し変化していきました。
現代風に言えば「あいつ、痛いなー」といった感じでしょうか。
本人はイケてるつもりで大量のジャラジャラをつけていたりとか、異様に香水のにおいをプンプンさせているとか、整髪料をつけまくっている様子を「しゃらくさい」と言えるかもしれません。
方言なの?
しゃらくさいという言葉は辞書にも載っていることかられっきとした標準語であり、方言とは違います。
方言には標準語とは異なる意味の言葉があったりして誤解を生みがちですが(徳島弁のせこいなど)これは方言でもなんでもないので文字通りの意味でとってしまって大丈夫です。
どうやら「オシャレだ」という意味で「しゃらくさい」という言葉を使っている人がいる、というような話が出てきましたがそれはその人が間違えて覚えてしまっているだけですね。