「しゃにむに」という言葉があります。
「しゃにむに頑張る」という使い方にあるように、何か一つのことに対してがむしゃらに、一心不乱になってその行為をするというようなイメージがありますね。
不思議なもので、こういった意味の言葉というのは上述のように「一心不乱」のほか、「しゃかりき」とか「がむしゃら」など様々な表現があるにもかかわらず、すべて日常生活でも使われるレベルの言葉ですよね。これだけ似たような言葉がいくつもあるのが日本語という言語の難しさであり、また魅力なのかもしれません。
さて、この「しゃにむに」という言葉ですが、いったい何が由来になっているのでしょうか?
こちらでは「しゃにむに」の意味・語源・由来などをお伝えしたいと思います。
しゃにむにの意味・由来とは
「しゃにむに」という言葉の意味は後先考えずに、がむしゃらにただ一つの物事に取り組んでいる様子を指すもので、類義語に無鉄砲などがあります。
しゃにむにを漢字で書くと「遮二無二」という風に書くことができます。
たまに「しゃにむに」という言葉を「しゃにむ+に」という組み合わせの言葉だと勘違いしている人もいるみたいですが、「しゃにむに」という言葉で一つの完成形になっております。
これを文字通りに解釈するならば「遮二」は「二を遮る」、つまり一つのことに集中するという意味で、「無二」は「二が無い」、これも一つのことに集中するとか、後先考えずに今あることだけに集中するというような意味になります。「無二の親友」というような表現を使いますね。
と、漢字だけを見ればそのままで通用するのですが、遮二無二は元々あった言葉が変化して、それを当て字にしたものです。
遮二無二の語源となった言葉は17世紀に使われていた「差理無理(しゃりむり)」という言葉です。
「無理」という言葉は現代と同じ意味なのですが「差理」という言葉の意味や語源は不明です。漢字をそのまま解釈するなら「理に差をつける」、道理や理屈からかけ離れて、つまり普通でないとか尋常じゃないというイメージでしょうか。
「遮二無二」というのは周囲と比べても温度の差が激しいですから、この解釈が正しいようにも思えますね。
あるいは「しゃしゃり出る」という表現の「しゃしゃり」が省略されて「しゃり」になったという説もあります。「しゃしゃり」というのは何となくイメージできると思いますが厚かましく出しゃばるという意味ですね。確かに、周りが見えないくらい頑張っている姿は、人によっては厚かましい人間に見えるでしょう。
これが18世紀半ばには「遮二無二」という表現に変わっていくわけですね。
なぜ差理が「遮二」になり、また無理が「無二」になったのかは不明です。日本語というのは時代の変遷とともに言いやすい音に変化していくというのが多いですが、「しゃりむり」と「しゃにむに」では明らかにしゃりむりのほうが言いやすいですからね。
「斜に構える」の「斜に」+「無理に」の省略形「むに」でしゃにむにとしたという説もありますが、「無理に」だけでほとんど意味が通じるにも関わらず「斜に」がついた理由がよくわかりません。
それにしゃにむに頑張っている人って、斜に構えるというよりは逆にまっすぐ、猪突猛進な姿勢のほうがイメージとして合っているでしょう。
また、前後両方とも一辺に変わっていくというのもなかなか不思議です。まあ、「しゃりむに」とか「しゃにむり」みたいに前半だけ変えるとか後半だけ変えるほうがかえって言いづらいので、語感をよくするために両方とも変えたのかもしれませんね。
ということで、「遮二無二」の意味・語源・由来について調べてまいりましたが、「差理無理」が元になっていることは明らかになりましたがそれ以外は不明というあまり芳しくない結果になりました。これでも遮二無二調べていたつもりなのですが。