魚というのは大抵、「魚へんに○○」という風に統一されていて漢字一文字で表せる物が多いですよね。
メジャーな魚はたいていこの「魚へんに○○」という形に収まっています。例外は「さんま」くらいですね。さんまは「秋刀魚」という漢字に対しての当て字ですが・・・
ちなみに魚へんに秋というのは「サンマ」ではなく鰍(カジカ)です。
鰍のように、魚へんに季節 という名前の魚は鰍を含めて4種類あります。
では「魚へんに春」、つまり鰆というのはなんて読むのでしょうか?
魚へんに春・・・これは鰆(サワラ)と読みます。
鰆といったら西京焼きが思い浮かびますよね。そして「旬が春の魚」だと思われています。というか、そうでなければ「魚へんに春」なんて漢字は使わないですよね。
しかし実は「魚へんに春」の魚・鰆(サワラ)は春に限らず、日本近海では真夏を除いて一年中捕れる魚です。
鰆(サワラ)は回遊魚なので群れが沿岸を通りかかる時期が旬となります。つまり通りかかる地方によって旬がずれるということでもあります。
北上した鰆(サワラ)は9月頃にオホーツク海あたりに到着し、寒くなる時期に合わせて南下していきます。
北上してくる時期は大体春頃になるので、これが一般的に言われている「鰆(さわら)は春が旬」とされている理由です。春のお彼岸の頃に捕れるので「彼岸鰆」なんて呼んだりもします。
特に瀬戸内海では晩春~初夏にかけて産卵のために押し寄せてくるので鰆が大漁になります。このあたりの地域では古くからこの時期に鰆(サワラ)を獲って食べていたので春が旬とされており、俳句の季語にもなっています。
しかし最も脂が乗るのは産卵を目前にした1月~2月の厳しい寒さの時期です。北上する中でエサをたっぷり食べて脂が乗り、厳しい寒さの頃に水揚げされる鰆(サワラ)は寒鰆(かんざわら)と呼ばれております。関東ではどちらかというとこの脂が乗った寒鰆が好まれますね。
初鰹と戻り鰹の話もそうでしたね。エサを求めて北上してくる中で捕れる、さっぱりした味わいのものを「初鰹」、エサをたっぷり食べて脂が乗ったものを戻り鰹と呼ぶのでした。
瀬戸内海では鰆(サワラ)のことを「春告げ魚」と言われているそうです。
魚へんに春というのはこの春告げ魚から来ているのかもしれませんね。だとすれば1月~2月が旬というのも納得です。
あるいは旧暦だと現在の立春が1月ですから、そういう意味でも「魚へんに春」という名前を付けられたのかもしれませんね。
「魚へんに春」と一口に言っても、その生き様や地域によっての違いなどが垣間見える、そんな面白い言葉になっていますね。