振り仮名を振るときに、たまに「ルビを振る」といった表現をすることがあります。
普通に「振り仮名を振る」という風に言えばいいのが、なんとなく慣用句やことわざ、変わった表現や難しい言葉って賢く見られたいがために使っちゃうことってありますよね。この「ルビを振る」というのは特にそうだと思います。
印刷業界などで主に使われている言葉ですが、俳優や女優などが台本についてのエピソードを語る際にも「ルビを振る」と言いますね。彼らは基本的に目立ちたいという自己顕示欲からテレビに出演しているのでそれもある意味、当然といえば当然です。
さてこの「ルビ」の語源や由来ってどういうところからきているのでしょうか?気になったので「ルビ」の語源・由来・意味について調べてお伝えしたいと思います。
ルビの語源・由来・意味
「ルビ」という言葉はあまり聞きなれないですが、これとよく似た言葉を私たちは知っています。それは「ルビー」です。
まさかそんなダジャレが語源に!?という風に思うかもしれませんが、実はこれがビンゴ。ルビの由来は宝石の「ルビー」なのです。
元々の由来は19世紀後半のイギリスで活版印刷に用いられていた活字の大きさに応じて宝石の名前を付けていたことから来ております。
イギリスといえば18世紀の産業革命から始まり長らく世界の帝王であり続けましたが、後にアメリカやドイツに工業力で追い越されてしまったものの19世紀後半というのはいまだ世界の覇権を握るリーダーと言える存在でした。
方や日本は明治維新によって近代化を成し遂げたもののまだまだ欧米に追い付け追い越せの時代でイギリスは目標の一つです。そんなイギリスの風習を取り入れるというのは自然なことだったのかもしれませんね。
ともかくイギリスでは文字の大きさを宝石で表すという洒落たことをしていて、
4.5ポイント=ダイヤモンド
5,0ポイント=パール
5.5ポイント=ルビー
6.5ポイント=エメラルド
という具合に、ルビー以外にも様々な宝石が文字の大きさに表現されていました。
元々は18世紀初頭の欧米で活字の大きさを表す一定の単位が存在しなかったことから通称で区別するために使っていた名残のようです。
この4つの宝石の貴重度が順番になっているのでしょうか?実際、ダイヤモンド、パール、ルビー、エメラルドというのはどれも貴石と呼ばれる価値の高いもので、特にダイヤモンド、ルビー、エメラルドは「西洋の四大宝石」として崇められております。もう一つはサファイアですね。
ダイヤは「宝石の王様」とまで称されるほど代表的な宝石ですし、真珠はそのダイヤの存在が判明するまで宝石の王様と呼ばれていたことから、非常に貴重な宝石です。これらの優劣はあまり気にする必要はないかもしれませんが、ダイヤが一番最初に来ていることを考えると単純にポイントが低いものほど貴重という考えでいいのかもしれません。
日本では1877年以降に本格的に活版印刷技術が普及しました。
日本の新聞社が新聞記事に使用していた文字というのは、活字の大きさが5号サイズでそれに対するフリガナが7号サイズでした。
フリガナに使われていた7号の活字の大きさが5.25ポイントとイギリスのルビーの5.5ポイントとかなり近かったため、7号活字のことを「ルビ」と呼ぶようになりました。
ちなみにアメリカでは「ルビー」は3.5ポイントの文字のことを表しているそうです。もしイギリスではなくアメリカから文字の大きさの呼び方の風習が入っていたら現在の「ルビ」はアメリカ版5.5ポイントの「瑪瑙(agate)」が由来になっていた可能性もあります。
「ルビ」の本来の由来からすれば、7号活字のことのみを「ルビ」と呼ぶため手書きで振り仮名を振った場合は「ルビ」とは呼ばないことになります。
しかし時代とともに言葉は変化するものです。そもそも英語由来の「ruby」から独自の言葉「ルビ」へと変化したという語源があるわけですから、そこに本来の意味や由来を見出すのはあまり意味のないことかもしれません。
活字のみに使われる本来の「ルビ」にはいくつかのルールがあります。
例えばルビを「振られる」側の親文字の大きさの半分の大きさにするだとか、拗促音(小文字の「っ」や「ょ」など)は使用せず、そのままで書くといった具合ですね。おそらく、文字の大きさを統一して見やすくするという理由でしょうか。