パンの語源・意味・由来とその歴史とは?ブレッドとの違いは?

日本には、言葉だけを聞くとあたかものように思えるのが実は日本独自の「和製英語」で、英語圏では通じないというものがあふれていますね。

「パン」という言葉もその一つではないでしょうか。

パン

パンは、あまりにも普及しすぎていて意識することはありませんが、中学校(今では小学生でしょうか)になってからパンのことを英語でbread(ブレッド)と言うことに少なからず違和感を覚えたはずです。

「パン」の英語が「ブレッド」なら、そもそもパンって何語なのでしょうか?これだけ普及している言葉が、いきなり意味もなく湧いて出たはずがありませんね。ということで、「パン」の語源・由来、またその意味やブレッドとの違いなどをお伝えしたいと思います。

世界・日本におけるパンの歴史と語源

パンというのはご存知の通り、小麦を原料にして作られます。古くは今から8000年~6000年ほど前の古代メソポタミアにまで遡り、この時は小麦粉を水でこねて焼いたものを食べていただけなのですが、これがパンの原型と言われています。

その後古代エジプトにおいて、偶然「発酵パン」が出来上がりました。

日本で小麦の栽培というのは弥生時代から行っていたようです。中国から伝わった「蒸餅」「焼餅」という食べ方はあったようですが、生地を発酵させて作る西洋風のパンは日本では1543年から、ポルトガルによって鉄砲とともにもたらされてからになります。

そう、実はパンというのはポルトガルによってもたらされたのです。

ポルトガル語でパンのことはpão と言い、これがパンの語源になっています。

そのポルトガル語のpãoは、ラテン語で「醸造する」という意味のpanis 〔パーニス〕が語源になっており、ほかのラテン語系における様々なパンの語源となっております。

イタリア語 pane 〔パネ〕
スペイン語 pan 〔パン]
フランス語 pain 〔パン〕

といった具合です。

日本とポルトガルというのは鉄砲が伝来してから様々な交流があり、パンだけでなく様々なポルトガル語が日本の日常の言葉として定着しています。カルタ、ボタン、コップ、キャラメル、テンプラ、タバコ、ブランコ、ビスケット、カボチャ、コンペイトウ、ジョウロ、おんぶ、ピンキリ、シャボン、などですね。今でも日常生活で使うような言葉ばかりです。

こうして日本に伝来したパンは、イエズス会の宣教活動と同時に広まっていくことになります。鉄砲などの様々な南蛮文化をいち早く取り入れていた織田信長がパンを食していたという記録も残っています。

織田信長

ただ実際には来日する貿易商人や宣教師たちがパンを必要としていただけで、一般にはそれほど広まることはありませんでした。織田信長は先見の明がありすぎたのでしょうか。

その後、キリスト教の流布を恐れて1587年の鎖国令が施行されるとポルトガルとの国交は断絶してしまい、国内ではキリシタン弾圧なども行われました。そしてパンもその槍玉に挙げられてパンそのものが禁止されてしまうため、しばらくは姿を消すことになりました。

ただ、鎖国してからも西洋では唯一オランダとの国交があったようにパンも完全になくなったわけではなく、長崎などで西洋人のために細々と作られてはいたようです。

再びパンが注目されるのは1840年に起こったアヘン戦争がきっかけでした。戦地において、米を炊くと炊飯の煙によって敵の標的にされかねません。それに比べてパンは保存性、携帯性に優れて兵糧として優れていたので、軍学者・江川太郎左衛門が日本で初めてパンを大量生産したのです。

確かに、パンと比べておにぎりなんかは湿り気があるので保存が難しいうえに、ちょっとしたことですぐに潰れてしまいますからね。

幸い、パンが使われるような戦争は起こらなかったのですがこれをきっかけとして再び広まっていったのです。

明治時代になると日本も積極的に西洋文化を取り入れ一般人にも広まり、明治二年(1869年)には現存する最古のベーカリー「木村屋総本店」が開店しました。

NHJ

ここからは諸外国から取り入れたものを工夫してオリジナルのものへと昇華する日本という国の本領発揮という感じで、様々な日本オリジナルのパンが作られていきます。

木村屋総本店が開店した明治2年、ご存じ「あんパン」が生まれました。

あんパン

1900年にはジャムパン、シュークリームからヒントを得たクリームパン、1910年にはメロンパン、1927年にはカレーパンといった具合に、「パンといったら」で思い浮かぶ面々が次々に生み出されていきます。

その後第二次世界大戦における原料不足により再びパン作りは低迷期に陥りますが、戦後はアメリカから大量の小麦が届けられるようになりパン作りも復活しました。まあ、この辺りは小麦を日本に輸出して売りつけたいというアメリカの思惑も感じられるところですが・・・

ともかく、紆余曲折あってパンは現在の私たちの生活に欠かせないものとなっていったわけですね。

パンとブレッドの違い

パンのことを英語でブレッドと呼ぶだけなので、本来の意味からすればこの2つに違いはなく、同じ意味のはずです。しかし、現実には「○○パン」と呼んだり「○○ブレッド」と呼んだりと、まちまちになっています。

国によってパンと呼ぶのは日本語、台湾語、ポルトガル語、スペイン語、フランス語で、ブレッドと呼ぶのは英語、デンマーク語、ノルウェー語といった違いはありますが、日本における「パン」と「ブレッド」の違いは、単に語感の良さや客層の違いによって大衆向けなら「パン」を、高級感を出すなら「ブレッド」を使うといった商業的な意味合いでの使い分けをするだけのようです。

和菓子と呼ぶか、和スイーツと呼ぶかみたいな違いでしょう。よく考えればその呼び方に意味などないことはわかるのですが、周りに流されて流行り廃りを気にするような層にとっては心に刺さるのでしょうね。

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