折り紙という文房具は、時代を問わず誰しもが小学校のころに遊んだことがあると思います。
私自身は手先がそこまで器用なほうではなかったので、折り紙といっても紙飛行機とか手裏剣を作るくらいでした。
あとは「パックンチョ」ってやつですね。好きな数字を相手に言ってもらって、その数だけぱっくんちょを動かして、裏に書いてある指令をさせるというもの。当時は「犬のウンコを踏む」とかかわいいものでしたけどね。
よく、ドラマなどで難病のクラスメイトの病室に飾るために一人一人が千羽鶴を折るという場面がありますが、あれに関しては私の小学校では「得意な人がクラスの人数分折る」という、完全分業制を敷いておりました。実に効率的ですね。
さてそんな折り紙は一体いつ、どのような起源や由来があって始まったのでしょうか?
年代を問わず「小学校の思い出」として認識できる、数少ない共通事項である折り紙には相当長い歴史がありそうですね。
ということで折り紙の歴史・起源やまたその折り紙から生まれた「折り紙付き」という言葉の意味や由来などについてお伝えしていきたいと思います。
折り紙の起源は様々?ヨーロッパ、中国、日本、韓国・・・
さて、まず最初に申し上げておきたいのですが、実は折り紙そのものの起源についてははっきりしないのです。
日本が発祥だという説を筆頭に、中国を起源とする説や、ヨーロッパを起源とする説、韓国を起源とする説などさまざまなものがあります。
まあ言ってしまえば折り紙というのは読んで字のごとし「折った紙」というただそれだけのものです。おそらく紙がある程度積んであったりすれば紙が折られることはごく自然に起こりうることです。
例えば、寒さをしのぐためにその辺のものをまとったことから始まる「衣服」の起源がはっきりしないことと同じようなことなのかもしれません。
色々なところでごく自然に発生したので、中国を起源とする説やヨーロッパを起源とする説が生まれるなど様々な憶測がされているのでしょう。そういう意味ではすべての由来が正しいのかもしれません。
とはいえ、ただ「紙を折る」のではなく、その折った紙でいろいろなものを作り上げるというのは、日本人の手先の器用さや細やかさがあってのことではないでしょうか。そういう意味では折り紙の起源は日本である、と胸を張って言えるでしょう。
海外では「origami」と言って通じるほどの存在になっていますからね。
というわけで、日本を起源とする説について説明をしていきます。
紙の起源と折り紙への発展
そもそもの「紙」というものは、7世紀に中国から日本にその製法が伝わりました。
紙(活版印刷術)は、火薬、羅針盤とともに「古代中国の3大発明」という風に言われておりますね。
自分の意志や情報などを形に残して伝えることができるようになったのはそれだけ大きな意味があったのでしょう。
製紙技術が日本に入ってくると、それを今度は日本人が工夫して丈夫な和紙というものを独自に作り上げます。
最初は、写経や記録などに使われるに過ぎなかった紙ですが、やがて神事にも用いられるようになり供物などを紙に包むようになりました。日本人というのは音によるゲン担ぎを好むので「神」と「紙」をかけたのかもしれません。
供物を紙で包んだ際に折り目がつくことから、紙を美しく折って飾るという儀礼折が生まれることになりました。これは折り曲げても大丈夫という和紙の丈夫さもあったのでしょうね。
折り紙が日本で用いられるようになったのは平安時代からです。しかし現在のように紙で動植物を折って遊ぶというものではなく、横長の紙を二つ折りにし、折り目を下にして手紙や目録を書くという、あくまで文書の形式の一つとしての使われ方をしていました。
室町時代になると様々な礼法が整えられ、紙包みの礼法も考えられるようになりました。
江戸時代になると和紙の生産が活発になって紙の値段が安くなったので庶民でも気軽に手に入るようになり、一気に折り紙の文化も広まっていったものと思われます。
井原西鶴の「一昼夜独吟四千句」(1680)の中の一句においても折り紙について記載があったり、「秘傅千羽鶴折形」(1797)という折り紙の本が出版されるなどのことからもそれがわかります。
おそらくそれまでは、和紙自体の生産量も限られているために文書に使われたり神事に使われるなどフォーマルで格式高い使われ方をしていたのが、大量生産されるようになったことで良くも悪くも紙を使うことに対する心持ちが変わり、そういった遊びをするゆとりが生まれたのだと思われます。
折り紙付きの由来と意味
そして「折り紙付き」という言葉が生まれたのも江戸時代からです。
「折り紙付き」という言葉の意味は「品質が確かなものであることを保証されていること」です。
平安時代に手紙や目録を書くための文書の一式として使われていたのは前述のとおりですが、江戸時代になると美術品や刀剣など高価で貴重なものの鑑定書にも使われるようになりました。
鑑定書があるということはすなわち「品質が確かなこと」を示しますね。ここから転じて物以外にも人の才覚などについて確かなことを「折り紙付き」という表現をするようになったのです。
あくまでもこの表現は「良い意味」として使うものなので、たとえ誤用をしたとしても失礼に当たることはそうないのですが、似たような言葉である「札付き」は本来は「掛け値なしで」という中立の意味ですが現在では悪い意味で使われることが多く、人によっては気分を害することもあるので注意が必要ですね。