秋になると暑さも和らいで、何かと生活がしやすくなりますよね。
それが理由なのかわかりませんが、「○○の秋」という言葉をよく耳にします。
しかし、一度聞いただけでは「別に秋に限ったことじゃないんじゃないの?」なんて疑問がわいてくる「○○の秋」も存在します。
ここでは、読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋など「○○の秋」についての由来や意味などをお伝えしたいと思います。
読書の秋の由来
読書の秋についてですが、これは唐の詩人・韓愈(かんゆ)の漢詩にあった「燈火親しむべし」という一節が由来になっています。
これは「秋になると涼しさが感じられ、夜には明かりを灯して読書をするのに最適だ」という内容の詩です。
この詩を、かの有名な作家・夏目漱石が「三四郎」(1908、明治41年)という作品の中で
「そのうち与次郎の尻が落ち付いてきて、燈火親しむべしなどという漢語さえ借用して嬉(うれ)しがるようになった」
と引用したことで知られることとなりました。
その後、「読書の秋」という言葉で登場するのは1918年(大正7年)の読売新聞朝刊5面における「読書の秋 図書館通ひの人々 読書と世間」というものです。
そしてそれから数年後の1924年(大正13年)には、日本図書館協会が11月1日~11月7日を図書館週間として設定します。
これは昭和16年に一度廃止になってしまうのですが、戦後になって改めて、読書週間として復活を果たし、現在も読書週間は続いています。
この現在も続く読書週間のおかげで、「読書の秋」は完全に定着しているといえるでしょう。
上述の韓愈の詩にもあるように、秋は気候から見ても読書に適しています。
人間が本を読むときや勉強をするときの適温は18℃と言われております。体感としてもこれくらいは暑すぎず寒すぎずのちょうどいい気温ですね。
暑い夏は読書に限らず何をするにも気力が要りますし、冬は寒さで手がかじかんで手作業がはかどりません。本の頁をめくるのも一苦労ですよね。寒い室内でタイピングをするといつもより速度が鈍くなるのを感じます。
それならば秋に限らず春も、と思いますが18℃くらいの時期というのは梅雨になるため秋よりも蒸してしまいます。そのため秋のほうがより読書に適している気候というわけですね。
スポーツの秋の由来
スポーツの秋の由来は1964年に開催された東京オリンピックにあります。
元々秋というのは気温や天気などの気候も良く、スポーツはしやすい季節ではあります。そのため「スポーツの秋」という言葉自体は、東京オリンピックのもっと前から使われておりました。
そこに東京オリンピックが開催されたことで、改めて秋にスポーツをするということに対して気風が高まりました。そしてなんと言っても開会式があった10月10日は「体育の日」として制定されました。現在ではハッピーマンデー制度により10月10日とは限らなくなっておりますが・・・
いわば、東京オリンピックが広告塔のような役割を果たしたというわけですね。まあオリンピック、それも自国での開催となればそれだけ与える影響も大きいでしょう。2020年の東京五輪は7月24日から開催ですが、また後世に残るような新たな文化が生まれるのでしょうか。
これだけ定着したスポーツの秋が「スポーツの夏」として変わっていく、そんなこともあるかもしれませんね。
食欲の秋の由来
食欲の秋の由来についてなんですが、これは至極単純です。秋は美味しいものが多いので食欲中枢が刺激されるため「食欲の秋」と言われております。
イメージとしても秋は秋刀魚、梨、栗、ブドウなど美味しいものが旬を迎えますよね。
輸送手段や栽培技術が発達した現在では、一年を通して美味しいものが食べられますが、昔は季節に応じて作物が収穫され、その中でも秋は最も食べ物が豊富な季節でした。
個人的には鍋物やおでんなどが好物なので、どちらかというと冬のほうが食欲を刺激されるのですが・・・
あるいは、脳の神経伝達物質の観点からも秋に食欲が増える理由があります。
人間にはセロトニンという精神の安定を保つ脳内神経物質があるのですが、これは日中の日射時間によって分泌量が決まってきます。日射時間が多いほど、それに比例してセロトニンの分泌も多くなるんですね。
秋は夏よりも日射時間が減少するので、セロトニンの分泌量も減ることになります。
このセロトニンの分泌量を増やすための方法として食事があるため、これを増やそうとして食欲が増すという理屈です。
また、寒い冬を乗り切るために体が栄養をため込もうとして食欲が増えるという見方もできます。
まあ、冷めた見方をするならば、いずれも「○○の秋」というスローガンを掲げることでその業界は経済が活性化しますよね。おそらくどの「○○の秋」も、まずそのスローガンありきで、なぜ秋にそれをすると良いのか、という理由は後付けなところもあると思います。