眉目秀麗な男性を表す日本語には美男子、イケメンなど様々な表現がありますが、たまに聞く言葉に「二枚目」というのもありますよね。
最近では若い俳優には専ら「イケメン」という言葉が使われることが多いですが、そういった若いイメージと対比するために四十代以上の俳優に対しては「二枚目」の方が使われることが多い気がします。
福山雅治さん、谷原章介さん、佐々木倉之助さんなどを思い浮かべると「イケメン俳優」よりは「二枚目俳優」の方がしっくりくるんじゃないでしょうか。
さてそんな「二枚目」という言葉ですが、これってそもそもどういう意味があるのでしょうか?「二枚目」と対比してお調子者のことを「三枚目」と言ったりもしますが、何が由来になっているのでしょうか?ということでこちらでは「二枚目」「三枚目」の意味や由来についてお伝えしたいと思います。
二枚目、三枚目の意味や由来とは
「二枚目」も「三枚目」も、これは歌舞伎の用語が由来になっております。
江戸時代の歌舞伎役者と劇場は一年契約で、毎年十一月に更改して新しい座組で興行をするのですが、その際に新しい役者を紹介してお披露目する「顔見世」において配られる「顔見世番付」というのものがありました。毎年十一月の時期にしか売られないので結構高額な価格で取引されていたようです。
その番付には一座の主要な役者八人が書き上げられており、それは劇場の正面にも看板として掲げられます。その番付の二番目、看板の二枚目に格好の良い役者を、三枚目に滑稽な役を演じる役者の名前をそれぞれ書いていたのです。
つまりこの由来からすれば、二枚目や三枚目だけでなく一枚目から八枚目までが存在することになります。それらをすべて詳しく書くと
一枚目・・・書き出し、一番人気のある主役
二枚目・・・美男
三枚目・・・道化、お笑い担当
四枚目・・・中軸、中堅どころ、まとめ役
五枚目・・・敵役、一般的な敵の役(最初に主人公と敵対する人物)
六枚目・・・実敵、善要素のある敵
七枚目・・・実悪、悪事の黒幕(ラスボス)
八枚目・・・座頭、元締め
といった具合になります。今では一人の俳優が主役をやっていたり悪役をやっていたりと様々な役を演じるのは普通ですが、江戸時代にはそういったことはなく一人の役者の役柄は固定されていたのです。
八枚目だけ、物語の役割とはあまり関係がないように思えますね。このあたりはプロ野球の始球式の時にスポンサー企業の社長が出てくるようなものなのでしょうか。
「二枚目」の意味をもう少し深く考えていくと、現在使われているような良い意味の言葉としてだけでなく、美男だけれどもデレデレしていて弱々しい「つっころばし」をも含んでいます。簡単に言えば「優男」といった感じですね。美男を際立たせるために白塗りをしていたことも、優男のイメージに一役買っています。
二枚目、三枚目という言い方は現在でも残っているのに主役である「一枚目」という表現を聞かないのは少し不思議な気もしますが、「二枚目」と「三枚目」というのは単純に容姿を表すことが出来るのに対して「一枚目」は物語の構成における役割であるため、日常生活においては表現しにくいことを考えると妥当のような気もします。
四枚目以降については数字が大きくなりすぎてピンとこないというのがありますね。まとめ役のことを「四枚目」、黒幕のことを「七枚目」だという風に覚えたとしても、寝て次の日になったらもう忘れていそうです。