「眉唾」という言葉があります。
嘘か誠かわからない、疑わしいものに対しての評価をする際に使われる言葉で、ここから派生して「眉唾物」といった表現もしたりします。
しかし、なぜ「眉唾」と言われるようになったのでしょうか?
例えば、「眉に舌をつける」という言葉から「眉舌」という風になったとすれば、そんな実在するかどうかもわからないビックリ人間の存在に関しての疑わしさから来ているのだな、と思いますが眉唾はどうでしょう?
口から唾を眉毛に当てるというのはほぼ不可能だと思いますが、指を介して唾を眉につけるという行為はそれほど難しくありませんね。
だとすればこの「眉唾」は一体、本来はどのような意味や由来を持っているのでしょうか?気になったので調べてみることにしました。
眉に唾を塗るの本当の意味とは?
これは昔、「眉に唾を付ける」ことで狐や狸に化かされないという風に信じられていたことから、おまじないのようなものとして行われていたことに由来します。
なぜかというと、キツネやタヌキは人の眉毛の本数を数えてその人の心を読むということをすると信じられていたので、眉に唾を付けることで眉毛をくっつき合わせて数えにくくしたのだとか。
元々、「唾」には魔力を封じる力があるとされてきました。例えば大ムカデ退治において矢に唾を塗って放ったら射貫けた、というのもここからきている話です(これもいわば真偽のわからない荒唐無稽な話でこちらを眉唾の語源とする説もあります)。単に眉毛を固めて本数を数えにくくするのではなく、唾そのものにも魔除けの力があるとされてきたのです。
これは何も狐や狸に化かされる時だけでなく、何か疑わしいものに遭遇した際には騙されているのではないか、と疑ってその魔力から逃れようとするために「眉に唾を塗る」行為をしていたのです。
狐や狸に化かされるという迷信があり、さらに狐や狸は眉毛の本数で人の心を読むという迷信があり、そのまたさらに重なった迷信が「眉に唾を付ける」というものなんですね。迷信、迷信、そのまた迷信として生まれたという何とも奇妙な由来を持つ言葉のようです。
江戸時代には「眉に唾を付ける」「眉に唾を塗る」と言っていましたが明治時代から疑わしい話そのものに対して「眉唾物」あるいは単に「眉唾」という言い方をするようになりました。
「眉唾物」という言い方については、「疑わしいことに対して騙されないように眉に唾を塗った」からなのか、そもそもその眉に唾を塗るという迷信の怪しさを言っているのかどちらにも取れますね。