「くつろぐ」という言葉がありますね。
この言葉から皆さんはどんな様子をイメージするでしょうか。優雅にお茶をしている様子でしょうか、ソファーにもたれかかっている状態でしょうか。
私はこの「くつろぐ」と聞いて思い浮かべるのは、犬が飼い主に腹を見せてだらしなく眠っている様です。
相手が人間であれば「遠慮しないでくつろいでくださいね」とは言っても、なかなかそれを額面通りには受け取れないものですが、動物は正直なので嘘偽りなく「くつろぐ」状態だと個人的に思っています。
ところで、この「くつろぐ」という言葉はどのような語源や由来をもつのかということが気になりませんか?
こちらでは、「くつろぐ」という言葉の語源や由来、また本当の意味などをお伝えしていきたいと思います。
くつろぐの意味や漢字は?
「くつろぐ」というのは、漢字で書くと「寛ぐ」になります。
元々「寛」という言葉には広々としてゆとりがある様を意味しており、それを動詞化した言葉が「くつろぐ」ということになります。「寛容」とか「寛大」という言葉がありますが、いずれもゆったりとした様をイメージしますね。
くつろぐの意味は心も体も楽になる、のんびりするということです。体だけでなく「心」も休まるというのが、真の休息を意味しておりますね。
くつろぐの語源とは
このくつろぐという言葉には語源となっている説がいくつかあります。
一つは「朽ちる」が語源になっているという説です。
朽ちる、というと朽ち果てるという言葉があるようにあまり良いイメージはありませんが、木などが腐って形が崩れてぼろぼろになる様を表します。また、そこから転じて「死」を意味することもあります。
ここに「ろぐ」という「揺れ動く」という意味の接尾語を足して「朽つろぐ」というわけです。そして「寛」という漢字がゆったりした様を表しているのは前述のとおりですが、ここに当て字をしてくつろぐになったのです。
なぜこの「寛」という漢字を当て字にしたのか、ということは不明ですね。
次に、「空ろ(うつろ)」が語源となっている説です。
「空ろ」→「空らう」「空らぐ」→「くつろぐ」と変化していったという少々強引な話です。なぜこのようにどんどん音が変化していったのでしょうか。単に口頭で言ったことが聞き間違われて変わっていったということなのでしょうか。
最後に「くつわ」という馬の口にはめて馬を制御する道具が由来になっているという説です。猿ぐつわ、なんて言ったりもしますよね。
この場合のくつろぐの「くつ」はとりもなおさず「くつわ」のことを意味しています。
競馬を見る人はご存知だと思いますが、馬というのは口にはめる「くつわ」を通して騎手からの意志を伝えて競争に望みます。「ハミ」と言った方が競馬に詳しい人にとっては馴染みが深いかもしれませんね。
このくつわがガッチリ噛んでいれば思い通りに動かすことも容易ですが、逆に外れているとコントロールが出来ずに勝手な行動をして暴れてしまいます。馬にとってはリラックスできる状態ですけどね。このハミが転じて「ハメを外す」なんていう言葉の語源になっていたりもします。
とはいえ、レースなどの張りつめた緊張状態ではない時には馬を休ませてあげる必要もあります。そんな時は馬の自由を奪っている「くつわ」を外します。そこから転じて「くつろぐ」という言葉になったという説です。
最も有力とされているのは「朽ちる」から転じたという説のようですね。
くつろぐを英語で言うと?
まず真っ先に思い浮かぶのは、日本のカタカナ英語としても存在するrelax(リラックス)という言葉でしょう。
もちろんrelaxでも通じますが、よりネイティブイングリッシュの口語表現に近づけるならば
make oneself at home
という表現が適当です。oneselfは対象が誰であるかによって異なり、自分ならばmyself、相手方に対して言うならyourselfというわけです。
実際、「make yourself at home」という表現は自宅に客人として招かれた際によく言われるそうです。この言葉をそのままで訳するなら「自宅にいる時と同じようにしてくださいね」ということです。これは「くつろいでください」という表現において最上級のものだと思いますが、驚くべきことに英語圏ではこれを文字通りに受け取るのが普通です。
つまり、冷蔵庫のものを勝手に開けたり、無断でトイレに行ったりといったことをまるで本当に自宅にいるようにしていいということなのです。これはそう言われても「空気を読む」日本人には考えられないことですね。
これも文化の違いというやつなのでもしこれを言われたら思いっきり自宅にいるようにくつろぐと良いでしょう。逆に「トイレお借りしても良いですか?」といちいち聞いていたらイライラさせるどころか「せっかくそう言ったのに心を許していないんだな」と傷つけてしまうことすら考えられますからね。