魚というのは大抵「魚へんに○○」という構成をしていますね。
鰹、鮪、鱈・・・・
そしてその中でも春夏秋冬というのは、四季折々の日本に生きている限り気になるところ。
魚へんに春・・・鰆(さわら)
魚へんに夏・・・鰒(あわび、ふぐ)
魚へんに秋・・・鰍(かじか)
というのはすべてこれまでにお話してきました。そしてついに最後
魚へんに冬・・・鮗 この漢字の読み方や由来をお話する時が来ました。。。
「サメ」かと思ったらサメは「鮫」でしたね。
ということで魚へんに冬「鮗」という漢字の読み方や由来のお話です。
魚へんに冬・・・「鮗」の漢字の読み方は「このしろ」といいます。
はて、読み方はわかったけれども「このしろ」なんて魚はちょっと聞いたことがないような・・・しかしこれ、実はお寿司でおなじみの「コハダ」の別名でもあります。
正確には、出世魚であるコハダが一番大きくなった姿が「コノシロ」になりますね。
シンコ(稚魚)4~5cm →コハダ 7~10cm → ナカズミ 13cm →コノシロ 15cm
こんな感じに名前が変わっていきます。
かつて鮗は大漁に獲れて飯の代わりにする魚という意味から飯代魚(このしろ)という風に呼ばれたそうです。
そして、この鮗は焼くと人の死体を焼く臭いがしたんだとか。
今では人の死体を焼くような場面にはそうそうお目にかかれませんが、昔は結構日常茶飯事だったのでしょうか。
その「焼くと人の死体の臭いがする」というのを利用したこんな話があります。
ある村の長者の娘がとびきりの美人で、その美しさに国司が惚れ込んで是非欲しい!と頼み込んだのですが娘にはすでに好きな男性がいたため、長者は「娘は死んだ」と国司の使いに言って棺に大漁の「鮗」を入れて火葬を行って納得させた、というものです。
このことから「子の身代わり」で「子の代」、このしろというわけです。
あるいは単純に殺されかけた子供を助けるために鮗を大漁に焼いて死んだと嘘をついた、という話も言われていますが、いずれも「子の身代わり」で「子の代」という由来は同じですね。
あとは、子供が生まれた時に胎盤や膜と一緒にこの魚を埋めると丈夫に育つと言われていたことから「子の代」と呼ばれるようになったという説もあります。
ちなみに「このしろを焼く」というのが「この城を焼く」を通じるため、鮗という魚は武士には忌み嫌われていたそうです。
なぜ魚へんに冬なのか?由来は
さて、なぜ魚へんに冬と書くのかというと、もちろん冬が旬の魚だからです。
とはいえ、コハダの旬は夏、という風に聞いたことがありませんか?これは一体どういうことなのでしょうか。
実は、先程の鮗の出世魚としての呼び名を見てもらうとわかります。
シンコ(稚魚)4~5cm →コハダ 7~10cm → ナカズミ 13cm →コノシロ 15cm
でしたよね。つまり、これに沿った成長の段階によって旬が異なるということ。
シンコ:7月~8月
コハダ:8月~9月
ナガズミ:9月~10月
コノシロ:11月~2月
これがそれぞれの旬になります。だから鮗は魚へんに冬、でコハダは夏が旬なのです。
まあ何をもって旬と言うか、という問題もありますけどね。
単純に味の美味しさということで言えば成魚である鮗が最も美味しいのですが、実はこの鮗は大きくなるに連れて金銭的な価値は下がります。シンコが一番高価なくらいです。
鮗は味がいいものの小骨が多くて食べづらいそうなんですね。
そういう意味で言えば「魚へんに冬」とはいえ、やはり旬は夏ということになります。