大晦日の夜になるとどこからともなく聞こえてくる「除夜の鐘」。
大体大晦日の夜の23時ごろから聞こえてくるものですが、テレビを見ながら遠目に鐘が鳴っているのを聞いて「寒いのに神社の人も大変だな~」なんて他人事のように考えていたことが思い浮かびます。
この除夜の鐘というのは108回鳴らすという風にされていますが、なぜ108回鳴らすのでしょうか?そもそも「除夜」とはいったいどういう意味を指すのか?などをお伝えしていきたいと思います。
除夜の意味とは?
除夜というのは「除日の夜」のことを意味しています。これは「除」という漢字に「古いものを捨て新しいものを迎える」という意味があり、一年の締めくくりである大晦日は正に「除日」というわけです。
つまり除夜の鐘というのは「大晦日の夜の鐘」という、まるで自動翻訳サイトが訳したような言葉になりました。これを大晦日の夜から寺院が鳴らしています。
除夜の鐘の起源は中国では宋の時代から、日本では鎌倉時代に伝わり、室町時代から江戸時代にかけて一般化されたようです。
108回鳴らす理由とは?煩悩の数?
除夜の鐘というと「108回」鳴らすことで有名ですね。そして俗に言われているのが、鐘を108回鳴らすことで108個あるとされる人間の煩悩を追い払うというもの。
煩悩とは、人間の心身の苦しみを生み出す精神の働きのことを言います。ざっくりと「金持ちになりたい」「女にもてたい」みたいな欲のことを言うのかと思っていましたが、それはちょっと違うようです。この煩悩をすべて取り払った状態を「悟りを開く」という風に言うのですが、悟りを開くためには仏門に入り僧侶になり、厳しい修行を積まなければなりません。
そこで、修行をしていない一般人でも除夜の鐘を撞くことで煩悩を取り払うことが出来るという言い伝えにより、この除夜の鐘の風習が広まって現代にも残っているのです。
それにしても、人間の心にはそんなにたくさんの数の煩悩が本当に存在しているのでしょうか?
実はこの108という数に深い意味はなく、ざっくりと「たくさん」という風にとらえてしまって良いです。そもそも古代日本においては「八」というのは聖数とされ、しばしば「漠然と多い」という意味で使われたりします。多神教の日本の宗教のことを「八百万の神(やおよろずのかみ)」という風に表現したりしますが、ここにも「八」という数字が使われていますよね。
あるいは、四苦八苦(4×9、8×9)の合計数を合わせて108、という説もあるようですが、これは108という数字に意味を持たせるために言われた後付け、というのが正しいようです。
ここから転じて、数珠における玉の数も108個になっております。
ちなみにこの除夜の鐘は、大晦日の夜に鳴らされるのは107回で、残りの1回は新年が明けてから鳴らされます。これは、その年の煩悩に煩わされないように、という意味が込められており「最後の1個の煩悩」自体に深い意味はありません。
これも108という数にあまり意味がないことを象徴するものと言えるのではないでしょうか。108種類の煩悩が個別にあるとしたら、そのうちの1個だけを新年に持ち越すということは特別な意味を持つはずですよね。しかしそういった話は聞こえてこないため、単に無個性化された1個に過ぎないということを裏付けているのです。
さらに言うと、「108回より多く」あるいは「108回より少なく」鳴らす寺院もあるそうです。これは並んでいる人の数に合わせるという寺院のサービス精神だそうですが、これまで108回確実に鳴らしていると信じていた除夜の鐘のアイデンティティは脆くも崩れ去ります。
まあ、除夜の鐘をカウントして本当に108回鳴らしているかどうか確認する、という作業をしている物好きはそうはいないでしょうが・・・