「いみじくも」という言葉がありますね。
意味がよく分かっていなくとも、語感が何となくかっこよくて使うと頭が良さそうに思えてくるから使っているという人もいるのではないでしょうか。
こういうちょっと難しい日本語を得意げに使っておきながら意味が間違っているというのは傍から見たらひどく滑稽なものです。なので「いみじくも」の意味や由来などをちゃんと理解してから使いたいものですね。
ということで「いみじくも」の意味や由来について調べてみました。
いみじくもの意味や漢字とは
「いみじくも」の元々の由来というのは「忌む」という言葉から来ており、これが形容詞化した「忌みじ」に助詞「も」が付いたのが「いみじくも」になります。
「忌む」というと「不吉なものとして避ける」というような、あまり良い意味では使われない言葉ですが、「忌みじ」というのは善悪関係なく、程度が並々ではなく甚だしいという風に良い意味でも悪い意味でも使われていました。
それは「忌まなければならないほどすごい」ということから来ています。
ものすごく悪いことが起きた時に「忌む」というのは当然のことですが、反対にものすごく良いことが起こった際にも何か裏があるのではないか、とか運を使い果たしてしまって今後は悪いことが起きるのではないか、とある意味「忌む」ということをしますよね。そういう意味ではこの「忌みじ」という言葉はなかなか的を射ていると言えるでしょう。
実際、望ましいもの望ましくないもの双方に対して「いみじく」という言葉は使われてきました。古いところだと平安時代の随筆「枕草子」において「ひどい」や「恐ろしい」という意味で使われていたようです。
鎌倉時代末期の中世以降は良い意味で使われることが一般的になり、「徒然草」においては「いみじけれ」という風に「素晴らしいものだ」という意味で使われています。
漢字で書いたり本来の由来を知っていくとどこか含みのあるような言葉に思えますが、実際には「適切に」「巧みに」「正に」といったように混じりけのない言葉として使われます。
なので「いみじくも先生がおっしゃった」「私の思っていることをいみじくも言い当てた」というような使い方が正しいものになります。
おそらく「恐れ多くも」だとか「奇遇にも」といったような意味で使っていた人も多いと思いますがこれは誤用ということになります。
「忌む」という悪い意味の言葉を使っておきながら良い意味で使うというのは違和感を覚えるかもしれませんが、例えば現代でもよく使う「ヤバい」という言葉も、本来は悪い意味で使っていたのが良い意味でも使われるようになったという経緯があります。
マイケル・ジャクソンの「BAD」という歌も直訳すれば「悪い」という意味の言葉ですがこれは「ヤバい」と同じような感じで使っていますし、あえて反対の意味の言葉を使うことでその意味を強調するという用法は時代も国も関係なく使っているようですね。
ただ、日常用語として使用する場合には正しい意味を知って正しい使い方をしたとしても、相手が間違って解釈している場合に語弊が生じてしまう可能性はあります。
まあ、口頭の会話では「いみじくも」と言うより普通に「適切に」「すごく」と言った方が簡単ですし、相手にも伝わります。言葉は正しい使い方かどうかではなく、「正しく伝わるかどうか」が大切ですからね。
このいみじくもを使うとしたら小説や記事などのすこし格式高い文章に箔を付けるために使うというのが最も無難な使い方ではないでしょうか。正直、日常でこの「いみじくも」とか言っている人は少々、頭でっかちな人のように思える気がしてきます。