「羊が一匹、羊が二匹・・・」
皆さんも、一度は耳にしたことがあるでしょう。眠れない時には羊を数えましょう、というあれです。
そしておそらく、眠れない夜に「羊数え」を試してみたところ全然眠れなかったのでそれ以来二度とやらなかったという人がほとんどではないでしょうか。
単なるおまじないの類であることは体感としてよくわかっているこの「羊数え」ですが、一体どのようにしてこのような迷信が広まっていったのでしょうか?
遊牧民でもなく農耕民族の日本人にとって羊という動物は、刈り取られた羊毛という姿との対面くらいで、生きて動いた姿の羊にはそれほど縁はありません。ますます何が由来になっているのか気になるところですね。
ということで、「眠れない時に羊を数える」という迷信の由来についてお伝えしていきたいと思います。
羊を数えることの由来とは
羊と日本人の関係が希薄だということは冒頭でも申し上げましたが、この羊数えはやはり日本由来のものではなくイギリスが発祥だとされております。
イギリスでは羊というのは身近な家畜ですが、羊飼いたちが羊を数えているうちに眠くなってしまったのが由来だという説がまず一つです。
さらに、そんな羊飼いが眠くなることに何か理由があるのか英語で羊数えをしてみると「one sheep, two sheep・・・」という風になり、「眠る」という意味のsleepとかけた駄洒落であるという説もあります。
上記のどちらの説が由来になっているとしても、日本人には全く効果がないことが分かります。
羊飼いが羊を数えて眠くなる理由は、羊を数えることが日常になっている羊飼いにとって単調作業だから眠くなるということですし、sleepとsheepをかけた駄洒落に効果があるのかはわかりませんが、それも英語だからこそ意味を成すのであって日本語にしても全く意味のない行為です。
実際に羊数えに眠る効果はあるのか
羊数えの理由や由来はともかくとして、実際にこれをやってみた時に眠る効果は得られるのでしょうか?
①羊の見た目の癒し効果により眠くなる?
無理矢理にこじつけて言うなら、羊の見た目に癒し効果があるから数えているうちに眠くなるのだ、という考え方があります。それはそれで一理あると思いますが、大半の日本人にとって羊はあまり馴染み深い動物とはいえず、羊といったら「羊毛」もしくはメエメエ鳴くくらいのイメージでしょう。
そもそも癒し効果のありそうな動物ということで言えば羊に限らず犬、猫、ウサギ、ハムスターなど何でもよく、むしろ個人にとって最も「癒し」だと思うような動物を思い描いた方が良いと言えます。
②単純作業を繰り返すことにより眠くなる?
羊という動物の意味はともかくとして、「何かを数える」という単純作業を繰り返すことで眠くなるという考え方もあります。
これも確かに一理あります。例えば学校で退屈な授業を聞いている際の先生の話が一本調子だと眠くなったり、電車に座っている時にあの単調な音を聞いていると眠くなったりしますからね。
しかしこれらと「羊数え」の決定的な違いは、「数を数えること」にあります。眠れないからといって羊を数えていくと、飽きなければの話ですがやがて100匹、200匹と数を積み上げていくことになるでしょう。そこまでに眠ってしまえれば良いですが、仮にその数が500もしくは1000にまで達したとしたら皆さんはどう思うでしょうか。
「500匹も数えたのに眠れない!」「1000匹も数えてしまった!明日早いのに!」と言う風に焦りますよね?これは時刻でも同じことが言えます。「もう2時だ!寝なくちゃ!」といった具合ですね。
焦れば焦るほど能が興奮して目が冴えてしまってますます眠れないというわけですね。
そもそも、ヨーロッパの人々の羊の数え方というのも、sheepに「s」という複数形をつけずに数えます。これはなぜかというと、どこにでもいておとなしく馴染み深い、もっと言えば「退屈な」羊が群れをなしている様子は単調そのもので、わざわざまともに数えるということをしないからです。
ヨーロッパでは羊というのは身近な家畜であり、広大な草原で群れる羊というのは田舎の田園風景そのものです。ヨーロッパの人々にとって、羊を数える行為はそんな田舎の風景を連想させてくれるというのも日本人との大きな違いです。
なので、普段羊を目にしない日本人が一匹一匹丁寧に数えようとすれば、そのことに脳を使って眼が冴えてしまい、数が大台に達したことでさらに焦って眠れなくなるという悪循環に陥るのです。
なので羊数えには眠る効果があるどころか、むしろ逆効果になってしまうということです。実際に羊数えをしてみて眠れなかったという体感からもお分かりでしょう。
どうすれば眠れるのか?
眠ろうとすればするほど眠れない。これは逆に言うと「眠れなくても別にいいや」と考えることで眠りにつくことが出来るということなのです。
なぜ眠れないと焦るのかというと、「一日眠らないと死ぬ!」という強迫観念に近い思い込みがあるからです。実際人間というのは、数日間不眠が続くとなれば別ですが一日くらい眠らなくともそれほど劇的に脳のパフォーマンスが落ちるということはないのです。
実際に、私自身の体験ですが高校入試の前日や大学のセンター試験の前日というのは眠らずに本番に臨んだものですが、両方ともそれほど大きな失敗もなく終えることが出来ました。
人間には、風邪薬だと騙されて何の効果もないカプセルを渡されて、服用したら治ってしまう「偽薬効果」という現象が起こります。多少の睡眠不足でも「眠ってないからダメだ!」と強く思うことで実際にそうなってしまうということが考えられます。
眠らなくても別に何ともない、という具体的な事例を頭に入れることで「眠らなくちゃ!」という強迫観念はなくなり、結果として眠りやすくと思います。