春と秋にはお彼岸がやってきます。
詳しい意味は知らなくとも、お彼岸というのは先祖に墓参りするということは何となくご存知かと思います。しかしよく考えたら、8月のお盆にもお墓参りってしていますよね。つい1ヶ月前のことで、またすぐに墓参りしなくてはいけないというのは何か意味があるのでしょうか。
こちらではお彼岸の意味や由来、お盆との違いなどをお伝えしたいと思います。
彼岸の意味と由来とは
彼岸というのは彼の岸と書きますね。その由来は、サンスクリット語「パーラミター(波羅蜜多)」の漢訳語「到彼岸」からきています。ざっくり言うと川の向こう岸という意味で、これはとりもなおさずかの有名な三途の川の向こう岸のことを指しているのです。つまりあの世ですね。反対に現世のことは此岸(しがん)と言います。
彼岸は仏教で悟り、涅槃の境地という意味にもなり、煩悩と迷いの世界である此岸から彼岸へ到達するために修行をします。
そういった仏教の考えと日本の習俗と結びついて、祖先を供養する仏事へと変化していきました。彼岸にいらっしゃるご先祖様と触れ合うということは彼岸へ到達するための道のりの一つという考えがあるのかもしれません。
お彼岸は何をする?お盆との違い
お彼岸は先祖の供養というのは何となく知っているものの、具体的に何をしたらいいのか迷うところもありますね。これはあまり難しいことは考えず、仏壇・仏具の掃除やお墓の掃除、供花やお供えなどをしてご先祖様を供養するというのが主です。
気になるのは、お盆との違いです。こちらもご先祖様を供養するという意味では同じですが、何しろお盆は通常8月中旬で、秋の彼岸は9月下旬とそれほど期間に間がありません。
これは、そもそも由来が違うところからくるものなので、ある程度内容が重複してしまうのは仕方ないところです。お盆というのは盂蘭盆会という古くはインドからある風習と日本の先祖信仰が合わさったもので、お彼岸は完全に日本独自の文化です。
ただ、由来が違えばその意味合いも少し違います。お盆は家に戻ってきたご先祖をおもてなしするという意味買いが強いですが、お彼岸は逆にこちらからあの世へと近づき、少しでもあの世へと近づけるようにする修行の意味合いも含んでいます。
まあ、一般の人はあまり修行ということは関係ないと思うので、素直にご先祖様の供養をするということで捉えておけばよさそうです。
お彼岸はいつ?
お彼岸とは、特定の日のことを指すのではなく、ある一定期間のことを指します。それは、春のお彼岸であれば春分の日を中日(ちゅうにち)とした前後3日間の一週間を、秋のお彼岸であれば秋分の日を中日とした前後3日間の一週間のことです。
このお彼岸の一週間の初日のことを「彼岸の入り」、最終日のことを「彼岸の明け」とも言います。
春分の日、秋分の日はそれぞれ春分点、秋分点を天文学において複雑な計算式により計算し、そこから決定されるので、毎年特定の日が決まっているわけではなくその年によって移り変わるので、お彼岸もそれに合わせてずれることになります。
「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、これも天文学から考えることができ、お彼岸というのは昼と夜の長さが同じになる境目の日でもあります。正確には少しお昼のほうが長いみたいですが。
よって、春のお彼岸ならこの日を境に昼が長くなっていくのでどんどん暖かく、秋のお彼岸なら夜が長くなっていくのでどんどん涼しくなっていくのです。
昼と夜の長さが同じになる日であるのと同時に、一年を通して太陽が最も真東から上り、真西へと沈んでいく日でもあります。仏教においては太陽が昇る東を此岸、太陽が沈む西を彼岸と考えるのですが、この日は此岸と彼岸はもっとも通じやすくなる日と考えることも出来るためこの日に先祖供養をするようになったのです。
春の彼岸と秋の彼岸の違いは?
春と秋の一年に二度、お彼岸はやってきますが春と秋で何か意味に違いがあるのかと思って調べたところ、明確な違いはないようです。それは前述のように、此岸と彼岸が最も通じやすい日だからということを考えるとある意味当然ですね。
お盆だったら、初日にご先祖様が帰ってくるので迎え火を焚き、最終日にまた天に戻っていくので送り火を炊くということをしますが、お彼岸に関しては同じ行事を一年に2回するという認識でよさそうです。
しいて挙げるなら春には牡丹餅(ぼたもち)、秋には御萩(おはぎ)を食べるという違いですね。
ほとんど同じ食べ物の牡丹餅と御萩ですが、その違いは使っているあんこがこしあんか、粒あんか、というところにあります。牡丹餅はこしあんでおはぎは粒あんですね。
これには先祖の供養する意味合いの違いではなく、単に小豆の収穫事情が関係しています。小豆は4月~6月に種まきをし、9月~11月頃収穫するのですが、秋には収穫したばかりの新鮮な小豆があり、これは皮が柔らかいのでそのまま粒あんとして食べますが、春まで保存した小豆は皮が固くなるためこしあんとして食べるのです。
この由来からいえば、秋に牡丹餅を食べても春に御萩を食べても問題はないですね。とは言え、伝統的な慣習を崩すことはあまり良しとしない人もいるので、慣例通り春に牡丹餅、秋に御萩を食べたほうが無難です。