ゴリ押し(ごり押し)という言葉は幅広いところで耳にしますね。
主に、芸能人などを売り出すために事務所が強力にプッシュする際に使われるような気がします。そして、それが視聴者のニーズとかけ離れている場合が多いですよね。
実際に、よくテレビで見る芸能人について「○○ ごり押し」というキーワードで検索がされていますね。
ところでこのゴリ押し(ごり押し)という言葉って、どのような語源があるのでしょうか?
私たちが「ゴリ」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは「ゴリラ」です。
ゴリラのように力強く「押す」ということで、無理やりねじ込んでくるという意味の言葉として「ゴリ押し(ごり押し)」はピッタリのような気もしますが・・・・本当に「ゴリラ」が語源になっているのでしょうか?
気になったので「ゴリ押し(ごり押し)」の語源について調べてみることにしました。
ゴリ押し(ごり押し)の意味・由来・語源とは
実は、ゴリ押し(ごり押し)の語源になったとされる説は二つあるようです。
①京都のゴリ押し漁
一つは京都の「ゴリ押し漁」です。
「ゴリ」という底生生活をするハゼの一種の魚がいるのですが、このゴリは吸盤状の腹ビレで川底にへばりつくように生息しています。ゴリは漢字で書くと鮴、魚に休むと書きますからそういった生態をしているのも納得ですね。
このゴリを捕獲するためには川底を削るくらいの勢いで力強く網を引く必要があり、かなり無理やりな方法を取るようなんですね。そんな様子から強引に、無理やり押し通す様を「ゴリ押し(ごり押し)」と表現するようになったのだとか。
しかしここで一つ疑問なのは、ゴリの漁に限らず、漁全般において網を「引く」作業が主ということです。「ゴリ押し(ごり押し)」という言葉が「ゴリ押し漁」が語源になっているとしても、元になった「ゴリ押し漁」自体の語源が少しあやふやなのです。
であるならばゴリ押しよりもむしろ、「ゴリ引き」とか「ゴリ上げ」のほうがしっくりくるのではないか、と思いますよね。
「押す」と「引く」という言葉は互いに対になっているものですが、どちらかというと「押す」のほうが力強い印象があり「引く」には控えめな印象がありますね。駆け引きにおいて「押してダメなら引いてみろ」というのは正にそれを象徴する表現です。
強引に物を押し通す力強さを表現するには「ゴリ引き」よりも「ゴリ押し」のほうが合っているということで「ゴリ押し(ごり押し)」という言葉になったのではないか、と個人的に予想しています。
②石を五里の距離押した
もう一つの説は、大きな石を「五里」くらいの距離を無理やり押して運んだことから「五里押し」→「ゴリ押し(ごり押し)」となったとするものです。
なるほどそれらしく聞こえるのですが、気になるのは突然出てきた「五里」という距離です。五里というのがどれくらいの距離になるのかというと、一里が約4kmなのでその5倍の20kmが「五里」になります。
どれくらいの大きさの石なのかわかりませんが、まあ少なくともちょっとやそっとじゃ運べないくらいの大きさなのでしょうね。それを20㎞というとかなり果てしない距離というのがわかります。フルマラソンの距離が42.195kmですからその約半分。とんでもない距離ですね。
「五里霧中」という四字熟語も存在することから、「五里」というのは果てしなく長い距離としての代名詞であることがわかります。
しかしゴリ押し(ごり押し)という言葉の意味というのは「強引に押し通すこと」を指すとはいえ、それはあくまでも「人知の及ぶ範囲」というのが前提にあると思います。となると、果てしない距離の象徴である「五里」というのはゴリ押し(ごり押し)の語源としてはちょっと噛み合わないような気もします。
そもそも、なんで石を押したのかという話の背景も見えてきません。「石を押す」という単体のエピソードだけで外堀が肉付けされていないことから、後付けで、それこそ「ゴリ押し」されて伝えられている由来なのではないかと思います。
となると、「ゴリ引き」ではないことへの疑問があるとはいえ「ゴリ押し漁」が語源になったという説のほうが正しいと思います。何よりも実際に「ゴリ押し漁」が行われていることも証拠として強いですからね。
ちなみに、「ゴリゴリ」という擬態語が「ゴリゴリ押す」という風に変化した、という説もあるようですがやはり確証がなく「ゴリ押し漁」が最も確かだろうと思われます。