たまに「ゲシュタルト崩壊」という言葉を耳にする人はいると思います。
以前、役に立たない豆知識を教えるという、フジテレビの「トリビアの泉」という番組で紹介されて以来認知度が高まり、様々なフィクションなどにも登場するようになりました。最近では、新垣結衣さん主演のドラマ「逃げ恥」こと「逃げるは恥だが役に立つ」においても登場してちょっとした注目を集めました。
割と浸透してきている言葉なので今更どういう意味なのか、というのを人には聞きづらくなっていると思います。
なのでこちらでは「ゲシュタルト崩壊」の意味や具体的な例についてお伝えしていきたいと思います。
ゲシュタルト崩壊の語源とは
そもそもこのゲシュタルト崩壊というのはドイツ語を語源としています。
ドイツ語というのは、西洋医学を日本に伝える際にドイツ人の講師を招いたことから日本とは昔から縁が深く、特に日本語に訳しづらいドイツ語というのはそのまま、医学用語として使用されているものが多いです。
カルテ、ウイルス、ガーゼ、トラウマなどがあり、このゲシュタルト崩壊というのは精神医学の分野からそのまま拝借された言葉です。
ちなみにドイツ語のGestaltがどういう意味なのかというと
Gestalt [ゲシュタルト] <女> ((-/-en))
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(人の)姿、容姿、体つき、体格; (物の)形; 格好
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人影、物影
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(歴史上の)人物; 登場人物; [話]えたいの知れぬ人物
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ゲシュタルト、形態
という風になり、正直日本語でどう訳したらいいのかよくわからない意味になっています。なので、「ゲシュタルト」そのものの意味を理解するよりはゲシュタルト崩壊として1セットでどういう意味かを覚えたほうが分かりやすいかもしれません。
ゲシュタルト崩壊とは?その意味は
ゲシュタルト崩壊とは、辞書的な説明をするならば「全体性を持ったまとまりのある構造から全体性が失われ、個々の構成部分にバラバラに切り離して認識してしまう知覚現象」のことを言います。
全体性を持ったまとまりのある構造、というのがよくわからないかもしれませんが、これは私たちが視覚を通じて認識するほぼすべてのものに共通して言える事象でしょう。
例えば文字ならばそれぞれの部首などが組み合わさって出来ていたりして、それらがまとまることで一つの意味を成しますし、人の顔なら眉、目、鼻、口、輪郭、髪形などのバランスにより個人を認識していると思います。
しかしこれらから「全体性が失われ」たとしたらどうなるでしょうか?
文字はただの点や線の集まりでしかなく、人の顔はただの肌色の物体にしか見えなくなります。これがゲシュタルト崩壊なのです。
もっとざっくり言えば、私たちは何かものを見るときにいい意味で大雑把に見て、足りないところを自ら補足して認識しています。例えば漢字で線が一本少なかったり、人がマスクをして顔を一部分隠していたとしてもそれを認識することができるはずです。
ゲシュタルト崩壊を起こすと、こういった大雑把に見て補完するということができなくなり、その個別の部分のみに注目してしまって意味が分からなくなる、いわば「視野の狭くなった状態」になったと言えるでしょう。発達障害の症状にもこういう「個別の部分に過集中してしまう」というものがありますね。
具体的な例をあげましょう。
こちらの文字を数分間注視してみてください。
傷傷傷傷傷傷傷傷傷傷傷傷傷傷傷傷傷傷傷傷
ある文字の外観をパッと見ただけでは何も起きませんが、注視を続けることで「あれ?傷ってこんな字だっけ?」と思い始めて来たらそれがまさにゲシュタルト崩壊です。
視覚の例は一番わかりやすいゲシュタルト崩壊ですが、これは何も視覚に限ったことではありません。
これは都市伝説的なところがあるので真偽は不明ですが、大戦中にナチス・ドイツがユダヤ人に対して人格をコントロールする実験を行い、一日数回被験者を鏡の前に立たせて「おまえは誰だ!」と言わせ続けたところ人格崩壊を起こして自分自身が認識できなくなった、という話があります。
本当に起こった話なのかはわかりませんが、ゲシュタルト崩壊の一種と言えるでしょう。
あるいは、一つの言葉を繰り返し言ったり、頭の中で暗唱し続けることでもゲシュタルト崩壊は起こります。あまり「ゲシュタルト崩壊」と言いすぎると、そのうち「ゲシュタルト崩壊」そのものの意味がよく分からなくなってゲシュタルト崩壊を起こしてしまうでしょう。