「だらしない」という言葉があります。
お金にだらしない、口元がだらしない、だらしない生活など、今すぐに己を律する必要がある生活態度の人たちを表す言葉が次々に出てくるのがこの「だらしない」という形容詞。
これほど語感と言葉の意味がマッチングする言葉もなかなか珍しいのではないでしょうか。
ところで、この「だらしない」という言葉の「だらし」って一体何なのでしょうか?
「だらしない」のほかにも「だらしがない」という言い方もしますから、「だらし」単体に何らかの意味が込められていそうですね。ということで、「だらしない」の語源・由来・意味などを調べてみることにしました。
だらしないの語源・由来・意味とは
意味としてはしまりがない様やきちんとしていない、整っていない様を表す「だらしない」という言葉。
この「だらしない」という言葉は、元々は「しだらない」というものでした。つまり、「しだらない」をシースーとかギロッポンみたいに言った言葉が「だらしない」なんですね。
実は、我々が日常生活でよく使う言葉でこういう業界用語みたいな使い方をしている言葉はほかにもあります。例えば「新しい」もそうです。読みは「あたらしい」ですが、「新た」というのは「あらた」という風に読みますよね。元々は「あらたしい」だったのが、シースーギロッポン読みをして「あたらしい」になったのです。
あとは、秋葉原(あきばはら→あきはばら)、山茶花(さんざか→さざんか)、舌鼓(したつづみ→したづつみ)などもそうですね。言いやすいほうに流れていってしまうのは仕方のないことなのかもしれません。
それはともかく、では「しだら」の意味とは何なのかというと、
(1)1、事の成り行き。事情。2、好ましくない状況。ひどいありさま。ていたらく。ざま。3、好ましくないふるまい。ひどい行状。
といった具合になります。
「しだら」自体の語源は「自堕落(じだらく)」から来ているとする説、「秩序無く乱れている様」を表す擬音語である「しどろ」から来ているとする説、サンスクリット語「修多羅(sutra)」から来ているとする説、など色々なものが考えられております。
上記の「しだら」の意味を見てみると、この言葉単体ですでに悪い意味を含んでいることがわかります。となると、「しだらない」は「しだら」の否定形で、むしろ良い意味になるのではないか、という風に思うところですが、実はこの「ない」というのは否定形ではなく、程度の大きい様を示す接尾語であり、「しだら」をさらに強調するための言葉なのです。
実はこの「しだら」という言葉は「だらしない」以外にも由来となっている言葉があります。それは「ふしだら」というものです。
ふしだらは「不しだら」とも書くことが出来ます。これは前述のサンスクリット語「修多羅」から来ています。
古代インドでは多羅様という葉っぱに経分を書き、それがバラバラにならないように穴をあけてひもを通してまとめていたのですが、このまとめるひものことを「修多羅」と呼び、そこから転じて正確に秩序立てられている様も「修多羅」と表現したのです。
それを否定した「不しだら」は主に貞操において秩序立てられていない様を意味する言葉になっています。
「だらしない(しだらない)」も「ふしだら」も、「しだら+否定形」という風に読み取ると同じ意味に思えますが、だらしない(しだらない)の「ない」は強調の意味になるのでこの点は少し異なります。
なぜ「だ」を頭に持ってきたのかというと、これは、日本語において「濁音」から始まる言葉というのは悪い印象を与えるため、それを強調するために「だ」から始まるように言い換えたのだとか。
なるほど、濁音から始まる言葉を思いつく限りで挙げていくと ぐったり、じめじめ、だらだら、どんより、ぼろぼろ、などでしょうか。確かに、あえてイメージの悪い言葉を作為的に選んでいるとはいえ、これらの言葉は悪いイメージが非常に合います。