「あかぬける」もしくは「あかぬけた」という言葉があります。
漢字で書くと「垢抜ける」という具合ですね。意味合いとしては野暮ったさが抜けて洗練されるというような感じです。つまり、「前までは野暮ったかった」ということを暗に含む言葉なので、言われた人によっては傷つくかもしれないので注意が必要です。
この言葉はその字そのものからもなんとなくその意味の連想はできますが、どういった由来や語源があったのでしょうか?それをお伝えしたいと思います。
あかぬける・あかぬけたの意味や由来
垢抜けるという表現は江戸時代から使われるようになった言葉で、野暮ったくなく、粋で、すっきりしている人物を「垢が抜け落ちた」という風に用いるようになりました。
「垢抜ける」という字からも、余計なものが取れて洗練されるという意味があるのはわかります。しかし不思議なのは「抜ける」という表現ですね。普通は垢というものは「落とす」という表現をするはずです。お風呂に入って垢を抜く」という表現はしませんよね。
「抜ける」も「落ちる」も、似たような意味で使われはしますが、そのニュアンスは若干異なり、「抜ける」は「中にあるものが外に出る」というような意味で、「落ちる」は「外についていたものが取れる」という風な違いがあります。
この謎を紐解くカギは、垢抜けるの語源となった一つの説です。「垢抜け」の垢という言葉はどうやら、最初は垢ではなく「灰汁(あく)」であったのだ、という説があります。
お鍋などをしていると肉から出る灰色の汁、灰汁(あく)ですね。肉だけでなく、野菜からも灰汁は出ます。
元々は垢抜けではなく「あくぬけ」という言葉だったのです。灰汁を抜く、という表現は今でも使いますからね。それがいつしか誤用なのか、「垢抜け」に転じていった、という説です。
確かに、「あくぬけ」という言葉を10回繰り返すと、いつしか「あかぬけ」に変わっていってしまいます。まあ、これは私が「あかぬけ」という言葉を意識しているからなのかもしれませんが・・・
口頭で「あくぬけ」と言っているとそのうち「あかぬけ」のほうが言いやすいということであかぬけになり、そこに「垢抜け」という漢字をあてたというのが由来ではないかと思われます。
ただ、「灰汁が抜ける」という慣用句は「垢が抜ける」とは別で、現在でも使うものです。垢抜けるが「洗練されて野暮ったさがなくなる」という意味なのに対して「灰汁が抜ける」は「人の性質や容姿に、いやみやあくどさがなくなる」ことを指すため、若干意味が異なりますね。
わかりやすく言うなら垢抜けるは「ゼロからプラスになる」で、灰汁が抜けるは「マイナスからゼロになる」という違いがあるように思えます。
垢抜けるも、灰汁が抜けるも、ともに江戸時代から存在している言葉のようなので何とも言えないですね。
垢抜けるの使い方
垢抜ける、は野暮ったくなく、洗練されているという褒め言葉なのですが、使い方によっては相手に不快感を与えてしまう可能性があります。
よく知られている使い方として「最近垢抜けたね」というものがありますが、これはやめたほうがいいでしょう。本人としては思わず本音が出てしまったのでしょうが、それはつまり「つい最近まで野暮ったかった」ということを暗に示すからです。
髪を切ったとか、化粧を変えたとか何がしかの「きっかけ」があったのならこれを言ってもまだ許されるかもしれませんけどね。それよりは「垢抜けている」という現在進行形で使うのが良いでしょう。これならば単に「洗練されている」という意味で、前は野暮ったかったという意味はなくなりますからね。