「またこんなところで油を売って・・・」
と言った具合に、無駄なことをしているだとか道草を食っている人に対しての叱責として使われることが多い「油を売る」という表現ですが、そもそもなぜ「油」なのでしょう?
「油売り」という単体の職業は今はないかもしれませんが、油自体は食用に、工業用に、といろいろな用途があるはずで、決して「油を売る」ことが無駄なことのようには思えませんね。
なぜ「油を売る」という表現になったのでしょうか?その本当の意味や由来・語源などを調べていきたいと思います。
油を売るの意味・由来・語源とは
「油を売る」という慣用句の意味は「仕事中に人目を盗んで怠けること」という風になるのですが、これは「油売り」の商売の形態から来ております。
油売りが台頭したのは江戸時代で、これは油が高級品から庶民へと広まっていった時期でもあるのですが、それ故に女性の髪用の油として売られていたりしました。
女性相手の商売となれば、世間話の一つや二つできないと務まりませんし、そもそも商人自体が話好きでなくては務まりません。
江戸時代の油売りは訪問販売で、一軒一軒回って、柄杓を使って桶から客の容器に移すという方法を取っていました。
そして油というのはご存知の通り粘性が高く、水などとは違ってすぐに容器から容器へと移すことはできません。そのため客の容器に油を注ぐのにも時間がかかったため、江戸時代の油売りはその時間をつなぐために客と世間話などの雑談をしていたことから来ています。
これは、決してサボっているというわけではないのですが、傍から見ると「仕事途中で放棄して雑談にふけっている」ように見えたのか、「仕事の合間にサボる」という意味で「油を売る」という表現が使われるようになっていきました。
まあ、女性相手の話となると火がついて止まらないことってありますよね。おそらく油売りのほうも、油を容器に注ぐつなぎとして時間が稼げればそれだけでよかったのでしょうが、一度投げかけたボールによって女性が止まらなくなってしまい、自分から話を振った以上それを無下にすることもできずに長々と相手をさせられた・・・そんな背景があったのかもしれません。
この由来からもわかるように、ただサボっている様子を表すのではなくあくまでも「仕事の合間の一時的なサボり」のことを指します。単にサボっていることを指して言っていたのでは使い方が異なります。
油というのは熱膨張率が大きく、気温が低い午前中よりも気温が上昇した午後に売った方が「かさ増し」が出来るため、午前中は油を売るのではなく世間話をして時間をつぶした、というようなことも由来と言われております。