「あべこべ」という言葉があります。
物事が逆になっている様を意味する言葉ですね。単に物理的な位置関係のことだけでなくもう少し抽象的な概念などでも多様に用いられております。
例えばドラえもんの道具に「あべこべクリーム」なんてものがありましたよね。このクリームを体に塗ると本来は暖かいものを冷たく感じ、冷たいものを温かく感じるという、暑さと寒さの感じ方が逆になってしまう道具です。
ドラえもんに限らず、フィクションではよくこの「あべこべ」という概念が用いられます。代表的なもので言えば、2016年に大ヒットした映画「君の名は。」も男女が入れ替わってあべこべになるというものでした。
「物事が逆になっている様」という概念を説明するのにこの「あべこべ」という言葉は手短で使い勝手の良いものですが、これは一体どのような語源や由来があるのでしょうか?
こちらでは「あべこべ」の本来の意味や語源・由来についてお伝えしていきたいと思います。
あべこべの由来・語源・意味とは
「あべこべ」という言葉は江戸時代から用いられており、漢字で書くと「彼辺此辺」もしくは「彼方此方」という風になります。
元々は「あちらべこちらべ」という言葉で「あっちのほう、こっちのほう」という意味として使われていたのが略されて「あべこべ」になりました。
もう少し紐解いていくと、「彼」というのは古語で遠くを指す指示語「彼(あ)」です。代表的なもので言えば「あれ」というのもここからきています。
逆に「此」というのは同じ指示語でも近くを指す「此(こ)」で、「これ」という風にも読みます。
これらの指示語に、接尾字である「方」もしくは「辺」を付けたのが「彼辺此辺(彼方此方)」ということです。似たような構成の言葉は「あちこち」だとか「あれこれ」というものがありますね。
本来の「あべこべ」の意味は上記のように「あっちのほう、こっちのほう」というものなのですが、いつしか「あっちとこっちが逆さまに」という意味に転じて、現在では逆さまになっている様子を表す言葉として定着しております。
なぜ「あちこち」や「あれこれ」を差し置いて「あべこべ」だけがこのような逆さまという意味で使われるようになったのかはわかりませんが、「彼辺此辺(彼方此方)」という字から解釈するならこれは物事の位置関係を示す意味で「あっちのほう、こっちのほう」ということになりますよね。これは「あちこち」や「あれこれ」といった抽象的な概念と異なり、物理的に逆の位置になる機会が多かったのが要因なのではないでしょうか。